小粒なイタリアン・スーパーカー フィアットX1/9 ガンディーニxランプレディの秀作 後編
公開 : 2022.11.06 07:06
1981年からはベルトーネX1/9へ改名
インテリアには大きく手が加えられており、ダッシュボードのデザインは一般的な印象に。パワーウインドウを獲得し、スイッチ類も整然としている。今回の例のように、レザーシートも選べた。
豪華装備もあって車重は880kgから920kgへ増えているが、排気量アップで最高出力は74psから86psに、最大トルクは9.7kg-mから12.0kg-mへ大幅に増強。その効果として、0-97km/h加速は9.9秒へ短縮し、中間加速も目に見えて改善していた。
ライトブルーのX1/9 1500 VSのオーナーは、サム・リード氏。クラシックカーへの入門として最近購入したという、1984年式だ。ちなみにX1/9は1989年まで生産されているが、実際のところ1981年以降はフィアットではなかった。
当初、トリノ近郊のベルトーネ工場でボディを生産し、フィアットのリンゴット工場で最終仕上げが施されていた。だが1981年からは、すべての工程をベルトーネ工場が担当。ベルトーネX1/9へブランド名も改められたが、フィアット・ディーラーで販売は続いた。
2台を並べると、確かに10年間の時代の経過を感じる。絶え間なく変化する、ファッションのように。
特にインテリアでは、1300で見られる当時の近未来的な雰囲気が失われている。垢抜けたといってもいい。だが、ステアリングホイールやメーターパネル、シートポジションなどは変わっていない。
50年後も失わない小さなミドシップの輝き
実際に運転してみると、間違いなく扱いやすい。1300より、日常的に乗りやすいイタリアン・クラシックであることは明らかだ。
X1/9 1500のエンジンは、始動時のアイドリングから厚みのあるサウンドを響かせる。アクセルペダルを傾けると、低回転域から意欲的に反応する。1300とは逆に、反時計回りに回転するレブカウンターの針も勢いよく角度を変える。
5速MTのおかげで、100km/hまで加速しても回転数は約400rpm少なくて済む。ギア比はクロースしており、エンジンのパワーバンドを保ちやすい。能力に優れたシャシーを活かしやすい。
シリーズ2のステアリングは、車重が増えたことを反映するように僅かに重い。それでも落ち着きは変わらず、反応はクイック。刺激的な運転を楽しめる。確かに、大きなエンジンとの相性に優れたシャシーだったといえる。
フィアットX1/9の登場から、50年が経過したことに驚かされる。これほど小気味良い走りを謳歌できるモデルは、現代では極めて限定的。半世紀を経てもなお、小さく軽いミドシップの輝きは失われていなかった。
協力:アンディ・ローリー氏、X1/9オーナーズクラブ、リッデン・ヒル・サーキット