買えるときに買っておけばよかったクルマ 12選 価格高騰で手が出せない名車たち

公開 : 2022.10.29 06:05

マセラティ・ミストラル

これは20年ほど前のこと。マラネロ近くの小さな町で、1965年式のマセラティ・ミストラル・クーペが売りに出されていた。かなりきれいなブルーの個体だった。バンパーやトリムの一部に手入れが必要だったが、ピカピカに磨き上げられていた。そして、2万1000リラで売りに出された。

ミストラルは、アストン マーティンDB5のイタリア版のようなものだが、レースの血統はより深く、そのツインカム、ツインプラグの直6は、1957年にファン・マヌエル・ファンジオにF1タイトルの栄光をもたらした250Fのユニットに由来するものである。

マセラティ・ミストラル
マセラティ・ミストラル

当時のパートナーと2人で購入を検討したのだが、値段が高すぎた。今は14万ポンド(約2300万円)から18万ポンド(約3000万円)の間で、もっと手の届かないところにある。

日産スカイラインGT-R Vスペック

1980年代後半、ツーリングカーレースで冷酷なまでに活躍し、肉食系で一枚岩のようなフォルムとそれに見合う性能を備えたクルマ。そう聞いて、人によっては(この画像がなければ)E30世代のBMW M3を思い浮かべるかもしれない。スカイラインGT-Rは、まともな個体なら少なくとも5万ポンド(約850万円)はする。

ハコスカやケンメリの時代からずっと後、日産が初めて現代に送り出したR32型は、地球の裏側から来たM3と肩を並べる「精神的いとこ」のようなクルマである。新車当時は破格の値段で売られていたが、今やその実力を反映した価格となっている。

日産スカイラインGT-R Vスペック
日産スカイラインGT-R Vスペック

グループAレースで圧倒的な強さを誇ったR32は、海外で「ゴジラ」と呼ばれ、行く手を阻むものすべてをなぎ倒した。そして、公道走行可能なホモロゲーションモデルは、「1990年代までに技術力で世界一を目指す」という日産の901運動の頂点に立つものであった。

R32は、8000rpmのRB26DETTツインカム直6エンジン、四輪駆動、クイックラック、後輪駆動のようなハンドリングバランスなど、これ以上ないほどの完成度を誇る。Vスペックでは、より優れたブレーキ、BBSホイール、駆動系の改良が加えられている。新車の時が絶好のチャンスだった……。

テスラ・ロードスター

ムーブメントを巻き起こしたクルマ。初代テスラ・ロードスターは、ロータス・エリーゼに駆動用バッテリーを載せたようなものだが、2008年当時に登場した時の様子を思い浮かべてみてほしい。

誰に求められて作ったクルマなのかはわからない。しかし、このクルマに約9万ポンド(約1500万円)を支払う勇気のあった人たちは、個性的で直線番長的な速さ(0-97km/h加速で4.0秒以下)を体感し、今日の基準から見ても十分な320kmという航続距離を手に入れたのだ。

テスラ・ロードスター
テスラ・ロードスター

現在ではEVムーブメントの象徴的、先駆け的存在などとされているが、実は長年にわたり、未来を垣間見せるだけの風変わりな存在に過ぎなかった。テスラ・ロードスターは結果的に、3500台しか売れていない。1人乗りの「乗り物(クルマではないらしい)」で商業的には失敗に終わったシンクレアC5ですら、5000台売れているというのに。

そのため、中古車価格は暴落し、大型で高価なバッテリーパックの劣化が進むと、状況はさらに深刻化する。一時期、3万ポンド(約500万円)程度でロードスターに乗ることも現実的に可能だった。ところが現在では、年式や状態にもよるが、10万ポンド(約1700万円)から15万ポンド(約2500万円)とプレミアがついている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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