乗り手の気持ちを鷲掴み トヨタGR86へ英国試乗 完璧なエンジン 変化した方向性 後編

公開 : 2022.10.30 08:26

2代目へバージョンアップしたトヨタの86。絶品の先代を超える仕上がりなのか、英国編集部が評価しました。

完璧といえる2.4Lの自然吸気エンジン

新しいトヨタGR86のフロントへ搭載される、2.4Lへ拡大された自然吸気の水平対向4気筒エンジンは、アイドリング時からスリリングなサウンドを響かせる。意欲的に回るユニットの可能性を、静かに主張するように。

エンジンルームから車内へは、トヨタがアクティブ・サウンドコントロールと呼ぶパイプでノイズが伝達される。低回転域では雑音も多いが、負荷が高まるほど音質は良くなっていく。

トヨタGR86(英国仕様)
トヨタGR86(英国仕様)

従来より人工的に聞こえるものの、耳障りなことはまったくない。最近では新鮮に思える自然吸気エンジンの息吹を、存分に楽しむことができる。

パワー感は大幅に増強されている。フラット4は4000rpmを超えた辺りから本領を発揮しはじめ、実際に速いだけでなく、聴覚的にも気持ちを高ぶらせていく。最高出力は234psがうたわれる。

レスポンスは即時的で、回転上昇は滑らか。レッドゾーンの7000rpm+αまで、勢いよく吹け上がる。一生懸命回したくなる質感は、完璧といっていいだろう。

ステアリングホイールからは、若干ながら、手のひらへの感触が薄くなった。先代より大きい18インチ・アルミホイールと高性能なタイヤ、僅かに直径が小さくなったステアリングホイールなどが原因かもしれない。

これらによって、パワーステアリングの働きが強められた可能性もある。だが、郊外の一般道を積極的に運転するような場面で、先代の備えていた輝きが失われたわけではない。

グリップ力と落ち着きを増したシャシー

総じて、新しいGR86は先代よりシリアスに運転することで輝くスポーツカーになったようだ。意欲的に旋回し、カーブでは高い速度域を保てる。エンジンの回転数を高め、大きいサウンドに浸りながら湧き出るアドレナリンに浸れる。

シャシーは、グリップ力を確実に増している。パワーが向上したことと相まって、惹き込まれるようなコーナリングも味わえる。その反面、クルージング時のしなやかな落ち着きは、僅かながら減じてもいる。

トヨタGR86(英国仕様)
トヨタGR86(英国仕様)

従来よりハードコアな仕上がりともいえ、日常的な低い速域ですぐ手に入る楽しさは、ほんの少し狭められた様子。そのかわり、速度域を問わず走りを堪能できる可能性は広げられた。

カーブの続く英国郊外の道へ足を進めると、グリップ力が高められ、サスペンションが引き締められたことを実感する。路面のツギハギや隆起部分を通過すると、明確な振動がドライバーへ伝わってくる。舗装状態では、ロードノイズも小さくない。

先代の86は、ドリフト・チューニングされた1980年代の日本車の現代版に思えた。新しいGR86は、よりハードコアになった1990年代の日本車的。

86の性格は、2代目で僅かながら決定的に変化したといえそうだ。これには、賛同できないという人もいるかも知れない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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