新型レンジローバーと比較 メルセデス・ベンツSクラス S 580e(3) 長期テスト

公開 : 2022.10.30 09:45

ドイツの名門ブランドが提供する、最上級PHEVの完成度は? ラグジュアリー・サルーンの実力を長期テストで確かめます。

積算9287km 新型レンジローバーと比較

先日、新型ランドローバー・レンジローバーへ試乗する機会があったのだが、その会場まで長期テスト車のメルセデス・ベンツSクラスで向かった。あまり適切な移動手段ではなかったようだ。

ランドローバーにとって、レンジローバーはフラッグシップとなる最上級モデル。そのドライビング体験は素晴らしいものだが、世界最高峰のラグジュアリー・サルーンの1台から直接乗り変えてしまうと、公平な印象の評価が難しいことも事実だからだ。

メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(右)とランドローバー・レンジローバー(左)
メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(右)とランドローバー・レンジローバー(左)

レンジローバーはぬかるんだ斜面を難なく登り、砂漠を走り抜け、岩が露出した河川敷をものともしない。世界最高峰のラグジュアリー・オフローダーとして、まったく不足ない能力を備えている。

もちろん、サルーンのSクラスにはそんな条件は求めない。だとしても、同じ速度でアスファルトを走るレンジローバーがSクラスより静かではなく、快適ではないとしたら、指摘しないわけにはいかない。ラグジュアリー・モデルとして。

同時に小さな疑問も抱いてしまう。オフロード性能を極めた最高級モデルを、本当に作る必要性はあるのだろうか。殆どのオーナーは、恐らく舗装路から外れることはないと思う。せいぜい、草の生えた自らの敷地程度だろう。

驚くほど優秀なSクラスのPHEV

考えを逆転させ、新しいレンジローバーの印象からSクラスの体験を考察してみると、興味深いことも見えてくる。長期テスト車のS 580eと試乗したレンジローバーには、どちらも3.0L直列6気筒エンジンが載っている。英国価格も大差はない。

だが、S 580eはガソリン・ターボエンジンのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)。レンジローバーは、マイルド・ハイブリッドのディテール・ターボだ。

メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

筆者はこれまで、アウトドア・ライフの相棒としてディーゼル・エンジンのSUVを選んできた。だが、新しいレンジローバーの価格は縁遠くなるほど上昇してしまった。

Sクラスのパワートレインは間違いなく優秀。エンジンが稼働状態でも静かだ。トルクの太さにも驚かされる。最高出力はレンジローバーが350psであるのに対し、S 580eは510psもある。車重はどちらも約2tで近い。

燃費はレンジローバーが12.6km/Lと、このクラスとしては悪くない。一方のS 580eは、駆動用バッテリーが空の状態でも14.2km/L前後走れてしまう。満充電時でのカタログ値は100km/Lを超え、少々現実味があるものではないだろう。

実際の利用環境では、自宅で常に充電を繰り返した状態で、燃費は18.4km/L。エンジンを始動することなく、現実的に駆動用モーターで95km以上走れる能力も備えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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