マクラーレンは、いかにしてミドシップの「GTカー」を作ったのか?

公開 : 2022.10.29 19:03

スーパーカーの姿・形で、グランドツーリングカーを。そんなマクラーレンGTの「こだわりポイント」を見つけましょう。旅ができるミドシップ2シーターを試乗レポート。

シートの背後に「V8」のあるGT

フェラーリプロサングエを発表したことで、2ドアのスーパースポーツしか作らないブランドは、さらに希少になりつつある。そのひとつがマクラーレンだ。

もちろん彼らにもSUVの噂がないわけではないけれど、現時点でロードカーは、1966年以来参戦を続けているF1同様、すべてミドシップ。センターステアリングのF1および後継車的存在のスピードテールを含めて、リアシートを持たないピュアなパッケージングにこだわってきた伝統もある。

マクラーレンGT(ルードゥス・ブルー)
マクラーレンGT(ルードゥス・ブルー)    宮澤佳久

そんなマクラーレンで異色の存在と言えるのがGTだ。

現在市販される他のマクラーレン同様、カーボンファイバーモノコックのキャビン背後に4L V型8気筒ツインターボエンジンと7速デュアルクラッチ・トランスミッションを縦置きして後輪を駆動するという、スーパーカー的な内容を持ちながらGTを名乗っているのだから。

そもそもGTというと、多くの人はフロントエンジン・リアドライブを思い浮かべるだろう。

“定石破り”のグランドツーリング

マクラーレンGTと同じ4L級のV8ツインターボを積む車種で見ても、フェラーリ・ローマやアストン マーティンDB11メルセデスAMG GTとなる。

グランドツーリングのためのクルマとなれば、長旅に対応できるラゲッジスペース、高速道路での直進安定性などが重要になる。見た目の雰囲気以外でも、フロントエンジンに行き着くのが自然だろう。

グランドツーリングカーを名乗るけれど、見た目もパワートレインのレイアウトもスーパーカー。マクラーレンはどんな手を使ってきたのか。
グランドツーリングカーを名乗るけれど、見た目もパワートレインのレイアウトもスーパーカー。マクラーレンはどんな手を使ってきたのか。    宮澤佳久

ではマクラーレンはどうやってミドシップのGTを作ったのか。試乗で確かめてみることにした。

旅の荷室 肝は排気系とエンジン

GTのボディサイズは全長4685mm、全幅1925mm、全高1215mmで、720Sと比べると140mmほど長いものの、幅はほぼ同じで、高さは20mmほど上回るにすぎない。2675mmのホイールベースは5mm長いだけだ。

スタイリングも、真横からのプロポーションはスーパーカーそのもの。しかし顔つきは、720S/765LTと比べるとヘッドランプが小さく落ち着いた表情。

荷室を広げるために、上方排気の720Sとは異なる取り回しのエグゾーストシステムに。前下がりのサイドシルにも注目。
荷室を広げるために、上方排気の720Sとは異なる取り回しのエグゾーストシステムに。前下がりのサイドシルにも注目。    宮澤佳久

後ろ姿は、リアエンドパネルから突き出していたマフラーを一般的にバンパー下から出したことで、挑発的な雰囲気は薄れた。

このマフラーの取り回しによって、GTはエンジンルーム上にラゲッジスペースを用意することができた。前作にあたる570GTと同じ手法であり、水平対向エンジンのポルシェ718ケイマンに近いパッケージングである。

そこは奥行きはある代わりに薄いが、インポーターによればゴルフバッグは積めるし、スキー板を収めることもできるという。

ドライサンプ方式のV8を低い位置に縦置きするという、ミドシップスポーツとして理想的なパッケージングのおかげだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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