次世代ゴルフに搭載される新技術
公開 : 2014.08.20 23:30 更新 : 2017.06.01 02:12
フォルクスワーゲンが公開した情報によると、ゴルフの次世代モデルにはエアロダイナミクスに関する技術革新がもたらされるようだ。
2019年にデビューが予定されるゴルフ8は、CO2排出量が90g/kmを切ることを目標とし、今までに主流メーカーが達成し得なかった領域に踏み込むという。
2001年に発表された ’1リッターカー’ と言えば、同社のXL1。空力特性のイノベーションによってその地位を確立する2シーターのコンセプトカーだ。このクルマが達成した111km/ℓという、驚くべく燃料消費技術を元にしてゴルフ8の開発は進められる。
2020年には更に厳格になるCO2エミッションに適応すると言うのが各メーカーに与えられた課題。これをクリアするには ’少なくとも’ 5年を要すというところからも、苦悩の様子が伺える。
ゴルフやポロにはじまり、パサートやティグアンにまで容赦なく課題は突きつけられ、同社の平均値から算出すると22-27%程度のCO2排出量の削減が必須事項となる。
そこで新たなエンジンを開発するのではなく、エアロダイナミクスの向上が鍵になりそうだ、とフォルクスワーゲンのエンジニアは導き出した。
”(ゴルフ8に関して)あらゆる改善策をすでに発見済みです” と言うのはフォルクスワーゲンの内部関係者。しかしながら、エンジニアとデザイナーを悩ます根本的な種は、依然として残り続ける。
というのも、ゴルフの全長はとても短いのである。
XL1は空力特性の向上を第一条件として掲げているだけに、非常に低く、長いプロポーションをもつ。しかしながらゴルフのコンセプトは、’ファミリーカー・サイズのハッチバック’ というところにある。言いかえれば、ここをスポイルすれば、ゴルフがゴルフではなくなるのだ。
ゴルフを長年制作し続けたメーカーであるだけに、コアなコンセプトを空力特性のためだけに簡単に捨て去ると、顧客がどのような感情を抱くかは百も承知なのである。
たとえばトヨタ・プリウスやシボレー・ボルトに見られるリアのデザインをゴルフに使用したとしたらどうだろうか? いくらエアロダイナミクスに優れるとしても、ゴルフの長年のファン層が離れていることは目に見えている。
ゴルフ8はMQBプラットフォームを用い、従来通りプレス加工と溶接を組み合わせてボディは整形されるそうだ。つまりゴルフ7よりも、横方向にも縦方向にも大きくも小さくもなってはならないということになる。
乾燥重量は1100kg以下までダイエットしなければならない、という課題も残ると聞けば、第三者である筆者でさえも頭がくらくらとしてくる。
ではアルミニウムのみでボディを作ってはどうか、と思うのも無理はない。しかしこれではコストが膨れ上がってしまう。このご時世、複雑な作業工程をむやみに増やすことなぞ、ご法度なのだ。
環境性能を向上させながら、コストを抑えていく。これほど難しいことはないけれど、自動車市場を生き残っていくには最低条件の課題ともいえる。
以下では、今のところ公表されている新型ゴルフの新技術について追っていくことにしよう。
フライホイール
前輪駆動車の後輪車軸に使われる、英国製のフライホイール・システムをボルボがすでにテストを始めた。
これから10年間、フライホイールを重要なキーとして見ているメーカーは多いという。フライホイールは電気モーターやバッテリーのように捨てられるはずのエネルギーを再利用するシステムとして利用できることが見込めるそう。ハイブリッド車を作るコストの4分の1しか掛からず、しかもシンプルで軽量ときたら利用しないわけがない。
ボルボが試しているシステムでは8.0秒のブレーキ制動時間で、10秒と81ps分のアシストが可能なのだそうだ。これを用いればゴルフの将来にも明かりが灯されることになる。
可変圧縮比エンジン
今年の初め、アウディの技術開発部門のチーフであるウルリッヒ・ハッケンバーグ氏は、フォルクスワーゲン・グループが可変圧縮比エンジンを開発中だということを明らかにした。
詳細については一切口にしなかったが、全てのエンジン設計者にとって重要なゴールになると示唆している。仮に圧縮比を状況に応じて変更できるエンジンが現状のものとなれば、高効率化に繋がる重要なアドバンテージになることは間違いない。
コースティング技術
直訳すると ’惰性走行の技術’ とでも言えるだろうか。こちらの技術もアウディのウルリッヒ・ハッケンバーグ氏が発表したものの一つ。特定の速度でエンジンをストップさせることによって、車を惰性で進めるというもので、フォルクスワーゲン製のデュアルクラッチ・ギアボックスにはすでに導入されている技術でもある。
これに加えて、更に2段階で使用可能にする予定。第1段階は時速6km/h以下での作動。最終段階では高速巡航時や、坂道を下る際にも、このシステムを作動させる方針だそうだ。
電制ターボチャージャー
エンジンのインダクション・システムにパワフルなファンを充てがう、電子制御のターボ機構はすでにAUTOCARでもテストしたアウディRS5 V6 TDI-e プロトタイプに搭載済み。
減速し始める際に、電制ファンからターボに空気を送り込むことによって、即座にフル・ブーストまで持ち直し、素早い加速を得る仕組みとなる。
排気エネルギーが控え目なダウンサイジング・エンジンを載せたクルマを低速で走らせる際に特に効果をもたらすため、将来のゴルフに採用されるであろう1.0ℓの3気筒エンジンのドライバビリティに一役買うことになりそうだ。
フォルクスワーゲンを始めとする、各メーカーがいかにして難しい課題を乗り越えていくか。それぞれのストラテジーにますます目が離せない。