逃亡生活ついに終了 デュナミスレーシング納車詐欺事件 逮捕された社長の「不正とトラブル」

公開 : 2022.10.29 05:45

長野県の自動車販売店「デュナミスレーシング」を巡る納車詐欺事件。逮捕された小谷社長には数々のトラブルがありました。

販売店社長に関するトラブルは多々……

AUTOCAR JAPANが今年1月13日に報じた長野市内の自動車販売店「デュナミスレーシング」経営者による新車購入の巨額詐欺事件。

首謀者とみられる小谷徹(おたにとおる)氏が10月26日、詐欺容疑で逮捕された。

長野県の自動車販売店「デュナミスレーシング」の社長の小谷氏が詐欺容疑で逮捕された。
長野県の自動車販売店「デュナミスレーシング」の社長の小谷氏が詐欺容疑で逮捕された。

デュナミスレーシングは通称「モーター屋」と呼ばれる地方に多いスタイルの自動車販売店である。

特定の自動車ブランドを販売する代理店ではなく、客から注文があり入金も完了した国産車、輸入車さまざまなクルマをディーラーの業販部門(特販部門の場合も)から仕入れて販売(納車)する。

この「納車」の時点でお金を納めたのに納車されない、というのが主たるトラブルである。

納車トラブルの被害者は100名以上ともいわれ、他の借金トラブルなどとあわせると被害者は300名以上とも。

この事件は小谷氏がほぼ単独でおこなったと考えられている。

筆者が把握しているだけで以下のトラブルが明らかになっている。
1.新車購入でお金を全額おさめたのに納車されない。
2.小谷氏にお金を貸した人びとに返済がおこなわれていない。
3.従業員に賃金が払われていない。
4.店舗や工場の家賃を滞納(店舗や工場の明け渡しと未払い賃料の支払い(計231万円)などについて訴訟がおこなわれ終結)
5.車検や整備などの下請け業者やパーツ販売会社などに対して支払いがおこなわれていない。
6.認証工場に義務付けられている「整備主任者講習」を受けさせていない。
7.現金購入にもかかわらず、所有者名義がオーナー本人ではなく、ディーラーの名義だったり、デュナミスレーシングの名義だったり……。

本記事では主に1.そしてクルマへの関わりが深い6.と7.についてこれまでの取材をもとに紹介していきたい。

デュナミスレーシング経由で新車購入

筆者が書いた記事を含めデュナミスレーシングに関する記事に寄せられる読者からのコメントには必ずと言っていいほど、

「そんな怪しい店で買う方が悪い。新車はディーラーで買うべき」、「現金一括で払うなんてありえない。どうやってお金用意するの?」、「クルマも見ずに買う?それでだまされたって自業自得」

被害者はデュナミスレーシングを経由して新車を購入するという方法をとっていた。
被害者はデュナミスレーシングを経由して新車を購入するという方法をとっていた。    デュナミスレーシング

このようなコメントが寄せられる。

誤解がかなり多いので、説明しておくがデュナミスレーシングからクルマを買うといっても、実際はディーラーから出荷された新車をデュナミスレーシングを通じて購入するスタイルである。

つまり、中古車とは違って新車を見ずに買うことにとくに危険性はないだろう。

また、デュナミスレーシングで納車されないトラブルを抱えている人のほとんどは「購入者の紹介」で買っている。

同社では新車中古車の購入はもちろん、パーツ類の購入や車検や整備などで入庫したことがある人には、毎日のように小谷氏からお買い得車両を紹介する営業メールが届くシステムになっていた。

紹介者には多くの場合謝礼(約2~9万円)も支払われていた。

社長の小谷氏は1995年にデュナミスレーシングを立ち上げているが、その前、80年代は日産ディーラーのトップセールスだった。

今回、被害者になっている人の中には、日産時代からの付き合いの人もいる、

30年以上にわたって付き合いがあり、その間、何の問題もなくこれまで納車されており家族のクルマも含めて複数台のクルマを小谷氏から購入している人も少なくない。

このような状況で小谷氏は長年の付き合いがあるお客さんたちの人生を変えるほど、ひどいことをしたのである。被害者には何の落ち度もない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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