逃亡生活ついに終了 デュナミスレーシング納車詐欺事件 逮捕された社長の「不正とトラブル」

公開 : 2022.10.29 05:45

「認証工場」の行政処分を受けていた

最後に6.と7.について書いておく。

デュナミスレーシングは北陸信越運輸局から認証工場として承認を得ていた。

現在、デュナミスレーシングの建物は解体されている。店舗の賃料なども未納になっているという。
現在、デュナミスレーシングの建物は解体されている。店舗の賃料なども未納になっているという。

認証工場では車検のための点検整備や、特定整備をおこなうことができるようになるが、車検そのものは工場内ではできないので、多くは運輸支局に持ち込んで車検を通すことになる。

デュナミスレーシングでは車検のための整備はもちろん、タイヤ交換など簡単な整備もほぼ外注されていたという。

認証工場が外注をしてもそのこと自体は特に問題ではない。

しかし、認証工場の要件の1つに、国家資格2級以上の整備士を整備主任者として登録する必要があるわけだが、登録されていたであろう整備士はそもそも10年くらい前に退職している。

そして事業者は整備主任者に対して年に1回の研修(法令研修+技術研修)を受けさせる義務がある。

この研修を受けさせないことは道路運送車両法に違反するため、今年8月と10月には北陸信越運輸局からデュナミスレーシングに対して20日間と35日間の事業停止命令が出されていた。

ちなみに、デュナミスレーシングでは8月のお盆明けから解体が始まっており、事業停止命令が出されたときにはすでに更地に近い状態となっていたわけだが……。

また、車検証の所有者名義も要注目の事実である。

通常、全額一括で現金購入すれば、使用者も所有者も名義は購入した人の名義になるが、デュナミスレーシングの場合はそうではなかった。

現金で購入したのに、名義が小谷氏の名前やディーラーの名前になっていた例も多々あり、事件発覚後に名義変更した例も多数ある。

10月27日付の現地新聞報道によると、小谷氏は詐欺容疑を否認しているという。

また、2020年12月に脳梗塞で倒れたあとは左半身にマヒが残っていて、杖無しでは歩けない状態であったという。

クルマはかろうじて運転できたという証言もあるが、その後、かなり症状が進んだのだろう。親族を頼って埼玉県内の老人ホームに入居していたとのこと。

そして警察から連行された場所も老人ホームだった。筆者の周囲では「小谷氏は体が不自由なので動き回る(逃げ回る)ことはできないだろう」という見方が強かったが、老人ホームに入居していたとは意外であった。

被害者はかなりの数にのぼりこれから捜査によってさまざまなことが明らかになるだろう。

新車購入のためにお金を工面して現金で一括支払ったのに納車されない被害者の方々が、心安らぐ日が1日も早く訪れることを切に願っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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