マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 鋭いレスポンス 秀逸なハンドリング 難点は乗り心地

公開 : 2022.10.29 20:25  更新 : 2024.11.10 08:56

意匠と技術 ★★★★★★★★★★

このクルマのキモは、MCLAこと新開発のマクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャーにある。マクラーレンが新型車のために、はじめて自社開発したカーボンコンポジットのモノコックだ。従来のモノセルやモノケージより大型で、剛性も高い。しかしアルトゥーラにおいては、まったく新しいテクノロジーという点で、目に見える部分以上に重要な意味を持っている。

これは最新スーパーカーのパッケージングや軽量化設計において、とても野心的で、たくみに仕立てられた例だと言える。一般的なプラグインハイブリッドパワートレインで問題になるサイズや重量を抑えるべく、レイアウトや仕様の多くが熟慮されているのだ。

リアエンドはメッシュ状のグリルが装着されている。エンブレムは、センター2本出しマフラーの間に設置される。
リアエンドはメッシュ状のグリルが装着されている。エンブレムは、センター2本出しマフラーの間に設置される。    LUC LACEY

またアルトゥーラは、新世代のイーサネットを用いた電子系アーキテクチャーを初採用したマクラーレンでもある。4つのメインプロセッサーでコントロールされ、各部は同じセントラルデータゲートウェイで接続される。これにより、ケーブル重量は25%削減され、データ転送はスピードアップ。ほぼすべての電子制御システムにおいて、OTAことオーバー・ジ・エアでのソフトウェアのアップデートも可能になる。

アルトゥーラの主たるパワーソースは、M630こと新開発のV6ツインターボ。バンク角が広く、既存のV8より50kg軽い。クランクシャフトの強度も高められ、8500rpmの最高回転数にも寄与する。最高出力は585ps、最大トルクは59.6kg-mだ。

エンジンは短くフラットさを増しているので、エンジンルーム内がじつに効率的にパッケージングできる。ハイブリッドシステムと燃料タンクのためのスペースも稼げて、全長は従来モデルより2cm程度しか伸びず、全幅はややナローで、ホイールベースは短くできた。

ハイブリッドシステムの総重量は130kg。その中には、5つのモジュールで7.4kWhの実用容量を持つリチウムイオンバッテリーも含まれる。モーターは、コンパクトでエネルギー密度の高いアキシャルフラックスタイプで、エンジンの直後に搭載。95psと23.0kg-mでアシストを行い、システム総合では680ps/73.4kg-mを発生する。

570S600LTからは大幅なパワーアップで、ランボルギーニウラカンアウディR8ホンダNSXをも上回る。

走行可能な状態でのアルトゥーラのもっとも軽い公称重量は1498kg。電動パワートレインを積んでいながら、570Sより46kg重いのみだ。これはすばらしい。

オプションが多数装備されたテスト車の実測重量は、満タンで1552kgだった。軽量なカーボンセラミックブレーキは標準装備で、ボディは軽量なスーパーフォーミング工法のアルミパネルだ。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアが新設計のマルチリンク。スティールのコイルスプリングとアダプティブダンパーを装着し、スタビライザーはパッシブ。ステアリングはコンベンショナルなフロントアクスルのみのシステムで、アシストはマクラーレンが好んで使う電動油圧式だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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