マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 鋭いレスポンス 秀逸なハンドリング 難点は乗り心地

公開 : 2022.10.29 20:25  更新 : 2022.12.29 01:52

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

夢に見るスーパーカーというのは、おそらくマクラーレンのようなステアリングを持つスーパーカーだ。

アルトゥーラのステアリングは、多くの先達たちと同じように、英国の典型的な道路で、手応えとペース、フィール、そして活気の完璧な融合を見せつけ、このうえなく直感的で、感触がすばらしく、トータルで夢中にさせられてしまう。

限界域に近づくと、安定性を求めた極弱アンダーステアのセッティングが顔をのぞかせるが、コーナリングの安定感は一級品。もう少しエキサイティングなら言うことなしだ。
限界域に近づくと、安定性を求めた極弱アンダーステアのセッティングが顔をのぞかせるが、コーナリングの安定感は一級品。もう少しエキサイティングなら言うことなしだ。    LUC LACEY

スーパーカーとしてはナローで、前方の視認性もすばらしいので、路上での位置決めもコース取りも楽にできる。しかし、一番の見どころはステアリングだ。キャンバーやグリップレベルの変化も、フロント各輪の小さな突き上げも、すべて感じ取れる。

それでいて、すべてをダイレクトに伝えて、操作を脅かすようなことはない。美しいトリムが施されたシンプルな3スポークのステアリングホイールを、きつく握りしめる必要もないのだ。

また、視線を遠くに向け、肩の力を抜けて、自信を持ってスピードを上げられる。しかも、グリップレベルが確実で、レスポンスが一定していて、完全に思い通りの操舵ができる。

サーキットでは、ハイブリッドシステムの重量や、高負荷時のパワートレインのなめらかさが破綻しはじめる兆候、ドライバビリティに悪影響を与える問題などが感じられないかと探ったが、なにも起こらなかった。

トラックモードに入れると、テスト車のアダプティブダンパーは、限りなく100%に近い周回ペースで走っても、車体の重量をコントロールし続ける。ピレリPゼロ・コルサはロングテールモデルほどにはアペックスで路面に食いつかず、ブレーキングしてコーナリングする際に車体を安定させる一定したアンダーステアがかすかにある。

もし、このクルマの運動性に改善の余地があるとすれば、この点だろう。そうすれば、小さいながらも決定的なくらいに、エキサイティングさが高まるはずだ。

しかし、一旦走り出してしまえば、アルトゥーラは横グリップ荷重を制御して、世界トップレベルの安定感でコーナリングし、マクラーレンの最新モデル群においても初採用となるアクティブLSDがトラクションや挙動とラインの整然さやアジャスト性を生み、それが連続するコーナーでも途切れないのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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