【現実の環境でテスト】BMW iX xドライブ50 一般道/高速道路/峠道で検証

公開 : 2022.10.31 20:15  更新 : 2022.11.01 10:33

航続距離は650km 充電時間に課題

シャシーはゼロから開発されたEV専用のプラットフォームで、アルミ押し出し材を多用したスペースフレームに軽量のFRPパネルが組み合わされる。

カーボンもドアやテールゲートに使用され、カーボン素材の織り目が随所に発見できる。

バッテリー容量は大きいが、充電にはそれなりに時間がかかる。
バッテリー容量は大きいが、充電にはそれなりに時間がかかる。    戎大介

これだけ軽量化をしているにもかかわらず、床に敷き詰められたリチウムイオンバッテリーのおかげで、重量は2530kgにも達する。

モーターは前後に1基づつ用意され四輪を駆動し、最高出力/トルクは313ps/8000rpm、40.8kg-m/5000rpmを発揮するが、この数値よりも注目すべきは、111.5kWhのバッテリー容量と650kmの航続距離である。

バッテリー容量が大きくなれば、航続距離も伸ばせるのは理の当然だが、111.5kWhのバッテリーを充電するのは、充電器容量がかなり大きくないと辛い。

これまで主流であった3kWhの充電器では満充電までに37時間余りでまったく話にならず、BMWが推奨する6kWhの充電器でも18.6時間もかかる。

ポルシェの8kWhであれば、14時間弱というところで、ようやく一晩で何とかなりそうなところまで来る。

幾ら650km走れるといっても、翌日も同じ距離を走りたいなら、大容量の充電器は必須であるということだ。

現状で、BMWのインフラへの対応はもう少し頑張ってほしいものだ。

同様に、急速充電でも現在の高速道路のパーキングにある30-50kWhの充電器では、30分充電しても100km程度しか充電できず、無いよりはマシだがまったく使えない。

iXやメルセデスのEQS(107.8kWh)のオーナーが、現在の日本国内で長距離旅行に出た場合はしっかり充電器の位置と容量を計算してからでないと、時間のロスで無茶苦茶腹が立つ、ということになりかねない。

足まわりと剛性の高いシャシーが効く

実際に運転席に座ってみるとダッシュボードはかなり低く、その上に横長の巨大なモニターが広がり視界はとても良い。

ドアノブが見当たらないのでやや焦るが、クリスタルのボタンを押せば一段階ドアが開き、そのあと更にドアを押して空ける構造で、慣れるまではかなり戸惑う。

BMW iX xドライブ50のインテリア
BMW iX xドライブ50のインテリア    戎大介

スイッチ類はクリスタルが多用されているが、全体としては過剰な豪華さはなく、嫌みの無いスマートな内装である。

走り始めると直ぐに判るのは、加速時のモーター音の音色である。

著名な作曲家ハンス・ジマーのデザインによる音質は、殆ど音のない室内で心地よく耳に届いてきて、運転するのが楽しくなる。

ステアリングは、六角形のものが装着されていたが、わたしにとっては使い勝手が良くなく好きではない。

ドライビングの際のセッティングは細かく調整できるが、回生ブレーキをアダプティブ、すなわち自動にした場合は、高速道路の下りなどで本来わずかな回生が効いてほしい局面でコースティング状態になって慌てたりと、まだスムーズさには欠ける部分があるが、それを除けばステアリング操作に対しての足まわりの追随や、コーナリング時の姿勢の制御も含めてさすがにBMWという走りを見せてくれる。

とくにハードにセットした時のフィーリングは、剛性の高いシャシーのしっかり感と相まって非常に秀逸だ。

反面、エアサスでストロークは充分に深いにもかかわらず、細かい路面の凹凸をコツコツと拾ってしまうのはやや気になるところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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