称賛に値する速さと洗練度 BMW iX M60へ試乗 ツインモーターで619psと103.3kg-m

公開 : 2022.11.10 08:25

望外に高い加速力とコーナリング

一方で、iX M60の動力性能は凄まじい。50km/h程度からアクセルペダルを倒すと、呆気にとられるような加速力が即座に立ち上がる。公道では許されない速度域に到達しても、勢いが鈍くなる素振りもない。

ワープするような加速時には、作曲家のハンス・ジマー氏が監修した人工ノイズが車内にうっすら響く。V12エンジンを搭載したフェラーリのように速度は増すが、それでも車内は静かなままだ。

BMW iX M60(欧州仕様)
BMW iX M60(欧州仕様)

アクセルペダルを蹴飛ばさない限り、ツインモーターのパワーデリバリーは穏やか。常に漸進的で直感的で、追い越しや合流車線で気をもむことは一切ない。即座に安全にこなせる。

カーブが続くワインディングへ進むと、約2.6tのSUVとしては望外に高いシャシーの能力が顕になる。タイヤのグリップ力を打ち破るには、路面が乾いている限り、英国郊外の一般道で許される97km/h以上の速度が必要。急加速を試しても、身悶える様子もない。

姿勢制御も、内燃エンジンのSUVとは比べ物にならないほど秀抜。伍せるのは、ポルシェカイエンの高性能バージョンくらいだろう。低い重心位置が貢献している。

ただし、ドライビング体験は淡白。6角形のステアリングホイールへ伝わってくる感覚は、殆どない。反応はダイレクトで重み付けも良好ながら、ドライバーとの一体感は得にくい。

また、ハイスピードで走れることは確かだが、コーナーでラインを探っていくような調整しろの幅も狭い。加速時以外に湧き出る興奮は、限定的といえる。

称賛すべき技術力と水準の高さ

BMWがiX M60で達成した水準の高さは、称賛すべきものといえる。619psで2584kgの大型SUVが印象的なまでに扱いやすく、上質で洗練され、乗り心地はしなやかで、安定した高速走行を叶えているのだから。並外れた技術力ではないことの証だ。

現実世界では、iX xドライブ50以上の能力が求められる場面はほぼないことも事実。ご契約の前に、追加予算でiX M60を選ぶ必要がるのか、少し考えてみても良いだろう。

BMW iX M60(欧州仕様)
BMW iX M60(欧州仕様)

BMW iX M60(欧州仕様)のスペック

英国価格:11万6905ポンド(約1964万円)
全長:4953mm
全幅:1967mm
全高:1695mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:3.8秒
航続距離:500-561km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2584kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:105.2kWh(実容量)
急速充電能力:200kW
最高出力:619ps
最大トルク:103.3kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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