なぜ今? フェラーリ・プロト、半世紀ぶりル・マン復帰のワケ ひと目でフェラーリとわかるマシン目指して

公開 : 2022.11.01 05:45

フェラーリが半世紀ぶりにプロトタイプでル・マン24時間レースに復帰します。その背景とニューマシン499Pを解説します。

ニューマシン「499P」とは?

フェラーリが2023年ル・マン24時間レースに投入するニューマシン「499P」を発表した。

これまでもフェラーリは世界耐久選手権(WEC。ル・マン24時間はWECの1戦として開催される)に参戦してきたが、近年はロードカーをベースとするLM GTEクラスにエントリー。

フェラーリ499P
フェラーリ499P    フェラーリ

488 GTEで挑んだ2021年シーズンもシリーズ・チャンピオンに輝いたほか、ル・マン24時間でも優勝を果たしている。

ただし、これはあくまでもLM GTEクラスでの話。

ル・マン24時間の総合優勝は、ロードカーをベースとしていないプロトタイプカー(LMP1クラス)によって長らく競われてきた。

つまり、LM GTEクラスに挑むフェラーリには、クラス優勝はできても総合優勝は狙えなかったのである。

ところが、WECとル・マン24時間の規則が見直され、昨年からル・マン・ハイパーカー(LMH)クラスがLMP1クラスに置き換えられることとなった。

ロードカーを直接のベースとしていないマシンで戦うという意味において、LMHもプロトタイプカーの1種ではあるものの、従来のLMP1とは異なり、ロードカーに似たスタイリングや技術を投入しやすいことがその最大の特徴。

このLMHの新設こそ、フェラーリがル・マン24時間の総合優勝争いに挑む最大のきっかけになったという。

ちなみに、フェラーリが総合優勝を賭けてル・マン24時間に参戦するのは、1973年以来、ちょうど半世紀ぶりのことだ。

半世紀ぶりの復帰 なぜ今?

「規則が変更されたことが、総合優勝を目標に据える最大のきっかけとなりました」

フェラーリのル・マン・プロジェクトでリーダーを務めるアントネッロ・コレッタは、そう語り始めた。

フェラーリ499P
フェラーリ499P    フェラーリ

「わたし達はこれまで、LM GTEクラスでたくさんの栄冠を勝ち取ってきました。ところが、ル・マンのGTクラスに関する規則が改正されるとともに、(昨年は)LMHクラスが誕生しました」

「こうしたすべての状況を鑑みて、記念すべき50周年のシーズンにプロトタイプカーでル・マンに復帰することを決めました。2023年は、ル・マンの初開催から100周年という歴史的な年でもあります」

中でも、とりわけ重要だったのがLMHクラスのスタイリングに関する規定だった。

「わたし達にとって、スタイリングはとても重要でした。人びとがわたし達のプロトタイプカーを見たとき、『これはフェラーリだ!』とすぐに気づいていただくことが重要だったのです」

実際のところ、発表された499Pのフロントマスクは最新のロードカーである296 GTB/GTSとよく似ており、ひと目でフェラーリとわかる。

これは、空力性能を最優先するLMP1クラスでは不可能だったことで、LMHクラスだからこそ実現できたことだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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