なぜ今? フェラーリ・プロト、半世紀ぶりル・マン復帰のワケ ひと目でフェラーリとわかるマシン目指して

公開 : 2022.11.01 05:45

フェラーリのアイデンティティ

ロードカーとの近似性はそのパワートレインにも表れている。

499Pに搭載されているエンジンはV6 3.0Lツインターボ。つまり、少なくとも形式的には296 GTB/GTSと同じである。

フェラーリ499P
フェラーリ499P    フェラーリ

また、499Pはハイブリッドシステムを搭載しているが、この点も296 GTB/GTSとの結びつきを感じさせるものだ。

「フェラーリは小さな会社ではありません」とコレッタ。

「そこでわたし達は、使えるツールをすべて活用することにしました。いわば、フェラーリのファクトリーの全面的な協力を得て完成したのが499Pなのです」

コレッタの言葉を裏付けるかのように、499Pのハイブリッドシステムは、フェラーリF1チームが開発したものと基本的に同じバッテリーのテクノロジーを用いている。

また、499Pのスタイリングは、風洞実験で理想的な空力性能を追求したあとで、フラヴィオ・マンゾーニ率いるチェントロ・スティーレの協力を得て作り上げたもの。

つまり、フェラーリが全社を挙げて開発したレーシングカーが499Pだといって間違いないだろう。

なお、今回発表された499Pはテスト用に製作された1号車で、すでに2号車も完成済み。

現時点での外観は、今後の開発によって微調整がおこなわれる可能性があるものの、基本的にはこのまま実戦に挑む見通しのようだ。

総合優勝へ ライバルも続々と

「テストは順調に進行しています」とコレッタ。

「すでにレースを戦っているライバルと異なり、499Pは今年7月に完成したばかりなので、いまは時間を惜しんでテストに取り組んでいます」

フェラーリ499P
フェラーリ499P    フェラーリ

「これまでフィオラノ、モンザ、ポルティマオでテストをおこない、1万2000kmを走行しましたが、自分達は正しい方向に進んでいると捉えています。今後もできる限り走行を重ねて、マシーンの熟成を図っていく計画です」

LMHクラスには2021年よりトヨタが参戦。

今年はプジョーがこれに続いているので、フェラーリは「第3の自動車メーカー」としてLMHクラスに挑むことになる。

なお、来季のWECならびにル・マン24時間にはLMDhクラスが新設されることが決まっている。

これは、シャシーやドライブトレインの一部をワンメイク化(メーカーに関わらず共通部品を組みづけるルールのこと)して参戦コストを抑えたカテゴリーで、来年以降、ランボルギーニポルシェBMWなどが次々とエントリーする見通し。

そして、このLMDhでもル・マンの総合優勝が狙えるため、フェラーリのライバルは今後、急速に増えていくことになる。

「2023年には多くのライバルが参戦します。2024年には、その数はさらに増えるでしょう」

「いずれにせよ、経験が豊富なチームが有利であることには変わりませんが、わたし達は2023年の参戦に向けて全力で準備を進めています。どのような展開になるかは、いずれ明らかになるでしょう」

2023年WEC第1戦は、3月11~12日にアメリカのセブリングで開催される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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