2シーターの新型EVを導入? ケータハム 衝撃的な製品計画が明らかに

公開 : 2022.11.01 06:05

全く新しい電動モデル でも軽量かつシンプルに

日産自動車に25年間勤務し、マーケティングに長け、サプライヤーとなりうるOEM企業とも良好な関係を築いてきたレイシュリー氏。新型車についても多くを考え、計画を練ってきた。「これは間違いなくセブンではありません」と彼は言う。

「しかし、ケータハムのお客様がよくご存知の、軽さ、シンプルさ、敏捷性、そしてパフォーマンスといった特徴をすべて備えているはずです。セブンと同様、スチール製のスペースフレームを採用します(ただし、別のもの)。ボディは2枚のシル、2枚のドア、フロントとリアのクラムシェル・オープニングの、アルミニウムまたはカーボンの6枚パネルからなります」

不運な結末に終わったケータハム「C120」のモックアップ(実物大模型)
不運な結末に終わったケータハム「C120」のモックアップ(実物大模型)

「セブンよりも美しくてモダン、それが大きな差別化ポイントになるでしょう。当初から純粋なEVとして設計しており、後輪駆動のみでSVA(型式認定のない車両に対する英国の車検制度)に基づいて登録される予定です」

ケータハムの伝統に則り、パワーステアリングもABSもエアバッグもなしで発売したいが、EVの瞬発力を活かすため、トラクションコントロールは搭載されるかもしれないとレイシュリー氏は言う。しかし、現実にはパワーステアリング、ABS、その他の安全装備が必要である。なぜなら、SVAの新基準に適合するため、前方衝突警告や車線逸脱警告といった機能を載せなければならないからだ。

それでもレイシュリー氏は、可能な限り軽量でシンプルなクルマになるとしている。おそらく車載システムの多くは、ドライバーのスマートフォンから操作することになる。「内蔵式のダイヤルはほとんどないでしょう」と彼は言う。「あるいは、(まったく)ないかもしれません」

セブンEVの軽量化実現には時間が必要

一方で、セブンEVについては発売を急ぐつもりはないと言い切る。ケータハムのアイコンである軽さ、シンプルさ、楽しさに欠けるかもしれないからだ。「ケータハムの歴史は、当初からOEM部品を想像力豊かに再利用することが中心でした。それをセブンEVで実現しようと思ったら、軽さはどうすればいいのか。小型EVの開発は、まだ黎明期なのです。部品は保守的で重い。1000kgのセブンを発売しようとは決して思いません。むしろやらないほうがいいでしょう」

レイシュリー氏が理想とするセブンEVは、車重700kg未満、かつ「20-15-20」と呼ばれるパフォーマンスを実現する。サーキットでフル充電し、20分間高速走行を楽しんだ後、お茶を飲みながら15分間充電し、またコースに出るというものだ。彼いわく、「これができないのであれば、発売すべきではない」とのこと。これらのことから、セブンEVの登場は少なくとも5年先のことと思われる。

ケータハムの特徴である「軽量」と「シンプル」は、EVで実現することは難しい。急がず、完成を待ちたい。
ケータハムの特徴である「軽量」と「シンプル」は、EVで実現することは難しい。急がず、完成を待ちたい。

たとえ軽量で高性能だとしても、ケータハムが絶対に発売しないのは、ハイブリッドのセブンである。「わたし達は軽さにこだわっているのです。なぜ、2つのパワートレインを必要とするクルマを作るのでしょう?それは、とんでもない妥協です」とレイシュリー氏。

ケータハムの喫緊の課題は、大手メーカーと同じ部品供給問題に対処しながら、年間最大200台の増産を実現することである。レイシュリー氏は、次のように述べている。

「部品サプライヤーには、何十年も前に設立された会社もあります。昔、親がコリン・チャップマンと握手していたような人たちと取引しているんですよ。30年前から年間500台の配線盤を製造している人にとって、1日の労働時間が足りないだけかもしれない。これらは、一見単純な問題に見えるかもしれませんが、すべて解決しなければならないのなのです」

大手メーカーと同じような問題に直面しているにもかかわらず、レイシュリー氏は、135人の従業員からなる自社の繁栄に誇りを持ち、その事業をさらに発展させることに胸を躍らせている。「自慢ではありませんが、今、わたし達が抱えている最後の問題は、ケータハムをもっと売ることなんです」

現在、セブンは推定1万5000台が流通し、その需要はとどまるところを知らない。65年もの間、一度もその名を超えることがなかったという事実は、オリジナルの正しさと開発者の才能を何よりも物語っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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