自宅に充電器がない! アパート住みでもEVを充電する方法 英国の事例

公開 : 2022.11.02 19:45  更新 : 2022.11.02 20:44

公共の充電設備

自宅で充電が難しい場合、おそらく最も簡単な解決策は、公共の充電器を使用することだろう。歩道にケーブルをわたしたり、近所に迷惑をかけたりすることなく、単に公共充電ステーションへ足を運べばよい。もちろん、一番便利な場所はどこか、自宅よりも電気代が高くつくかどうかなど、地域によって事情は異なるが、EVの航続距離がどんどん伸びていることを考えると、ほとんど手間がかからないはずだ。

公共の充電器は、欧州では設置数も増えてきている。
公共の充電器は、欧州では設置数も増えてきている。

その他の選択肢は?

まず、短時間で充電を済ませることができるのが、急速充電ステーションだ。英国では多くの場合、互換性のあるモデルであれば1時間以内に満タン近くまで充電できる。短距離移動が多い人なら、1~2週間に1度程度の充電でいいだろう。

しかし、急速充電ステーションは都市部よりも郊外に多く、充電のためにわざわざドライブが必要となる。また、急速充電を頻繁に行うとバッテリーの劣化が早まってしまう。そして当然ながら、急速充電にはお金がかかる。欧州の充電インフラ企業Ionity社などは、1kWhあたり69ペンス(約116円)と、従来のガソリン・軽油に遠く及ばない価格設定としている。

住宅地の街灯や商業施設など、既存の設備を応用した充電器も多い。
住宅地の街灯や商業施設など、既存の設備を応用した充電器も多い。

もう1つの選択肢として、パーキングメーターのような路上充電器が挙げられる。スマートフォン向けのEV充電アプリ「Zap Map」などを使えば、充電器の場所だけでなく、充電器の稼働状態もわかるようになっている。

ただし、充電速度は遅い。英国の家庭で一般的な3ピンタイプの3kW充電器が多く、例えばテスラモデル3の充電には24時間かかることになる。また、充電の時間制限はないようだが、エチケットとしてせいぜい数時間までとされているので、夜間や日中の仕事中に充電しっぱなしにすることはできないそうだ。

路上充電器には、街灯設置型のタイプもあり、簡単に言えば、ソケットと制御ユニットを備えた変圧器が街灯に取り付けられたものである。アプリを使ってアクセスし、通常3kWの低速充電が可能で、設置にかかるコストは低い。

イングランド南部のブライトン・アンド・ホーヴ市は、最近、住宅街に街灯充電器を200台設置した。しかし、必ずしもEV専用駐車場は併設されているわけではないので、当該スペースにエンジン車が駐車している場合もある。

料金については、プロバイダーによって異なるが、1kWhあたり26ペンス(約44円)程度が一般的である。また、月極めや年極めの契約が可能なところもあり、使用した電力量に応じて料金が安くなるシステムも導入されている。スマートフォンのアプリで利用できるケースがほとんどだが、RFID(Radio Frequency IDentifcation:充電器のロックを解除するためのカードやフォブ)を必要とするものも少数ながら存在する。

もう1つの充電方法として、商業施設の充電器を利用するというものがある。英国のスーパーマーケットでは、駐車場に充電器を設置している店舗が多く、無料で利用できるのが嬉しいところ。例えば、英国最大の小売店であるテスコはフォルクスワーゲンと提携し、店舗ベースで独自の充電インフラを構築している。

こうした施設では無料で使える7kW充電器が一般的だが、中には50kWと22kWの急速充電器が設置されているところもある。前者は1kWhあたり28ペンス(約47円)、後者は無料となっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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