日産アリア 詳細データテスト 広く高品質な室内 直観的な動力系 足回りは乗り心地も操縦性も難あり

公開 : 2022.11.05 20:25  更新 : 2022.12.02 02:31

走り ★★★★★★★★☆☆

アリアの独特なポジショニングは、並外れた結果を期待させるが、加速性能に関する限りそれにはそぐわない。そして、これまでテストした、シングルモーターで大容量バッテリーを積むEVに、それを叶えるものがなかったのも事実ではあるが。

スロットルペダルを思い切り踏み込んでも、発進はきっちりと制御が効いていて、0−97km/h加速は8秒をやや超える。はっきりいって、5万ポンド(約850万円)級の最新ファミリーカーとしては最低ラインで、ライバルの多くにかなり引き離されている。

モーターの形式はあまり一般的ではないが、その狙いは高速域でのパフォーマンス低下を抑えることにある。低速からの爆発的な加速はないが、それもむしろ扱いやすさにつながっている。
モーターの形式はあまり一般的ではないが、その狙いは高速域でのパフォーマンス低下を抑えることにある。低速からの爆発的な加速はないが、それもむしろ扱いやすさにつながっている。    LUC LACEY

日産が発表している公称値は、0−100km/hが7.6秒となっているが、それはちょっとばかり楽観的な数字だ。今回のテスト環境がほぼ理想的だったことを考えると、そう言わざるを得ない。

それが電磁石を用いた他励電動機の特性であっても、単純に日産のチューニングによるものであっても、トルクの出方はかなり慎重で、徐々に盛り上がるので、前輪が破綻することはない。これまでにテストした前輪駆動EVの中には、トラクションや安定感、ドライバビリティの確保に苦戦するものもあったが、それとは対照的だ。

アリアは余計な力を使わず、確実に動き出す。ペダル操作へのレスポンスはクリーンでリニアだ。その結果、動きは全体的に直観的で予想しやすい。パワートレインの完成度という点では、それなりの成功を収めていることに気付かされる。

走り出してみると、低速では衝撃的なまでに静粛性も乗り心地も優れ、日産が意図した、市街地における穏やかで快適な移動という狙いどおりに仕上がっている。ただし、路面の平坦さや舗装のスムースさに依存するところもある。その辺りは、快適性/静粛性の項で詳しく説明しよう。

ペダルの反応はとくに過敏ではなく、日産のe−ペダルはスロットルと回生ブレーキを使って、渋滞の中でのワンペダル運転を容易にしてくれる。回生レベルの上下も、速度や状況に応じて巧みに自動調整する。

これを切って、普通に2ペダルで運転すると、ブレーキペダルのフィールはややソフトで不明瞭なところがあるものの、看過できる程度だ。回生レベルを調整できるステアリングパドルがあれば、もっとよかったのだが。

街を出ると、速めの巡航速度を維持する能力は、これまでテストしたEVの中でも高めだ。97−128km/h加速は4.6秒で、アウディQ4 E−トロン40の6.5秒や、キアEV6の5.1秒を凌ぐ。ちなみに、ディーゼル車のBMW320dは5.1秒だった。

日産が電気モーターのチョイスは、明らかに的を射ている部分がある。EVに、高速道路でも一般道でも変わらぬ走りを、という狙いは達成できている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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