スポーツカーの理想像 トヨタGT86(86) 世代交代後も過去10年のベスト お手頃ドライバーズカー選手権(4)

公開 : 2022.11.13 08:26

懐が深く扱いやすく、自在に操れるバランス

ここまで5台を試乗して、ベスト・オブ・ベストを決めなければならない。ホンダシビック・タイプRが1番だと思う人は? 審査員が顔を見合わせる。トヨタGRヤリスとフォードフィエスタ STに対しても、誰もが悩ましい表情を浮かべるだけだ。

マツダMX-5(ロードスター)には、マット・ソーンダースが堂々と手を挙げる。ジェームス・ディスデイルも。マット・プライヤーとイリヤ・バプラートは、トヨタ86へ1票を投じた。

グレーのホンダ・シビック・タイプR GT、ホワイトのトヨタGT86(86) プロパッケージ、グリーンのフォード・フィエスタ ST
グレーのホンダ・シビック・タイプR GT、ホワイトのトヨタGT86(86) プロパッケージ、グリーンのフォード・フィエスタ ST

最終的には筆者の挙手で結論が導かれた。この判断が最適といえるのか、2週間後に原稿をまとめている今でも少し悩んでいる。ホンダ・シビック・タイプ Rは捨てがたい。だが、後輪駆動の方が楽しいことも間違いはない。

マツダ・ロードスターとトヨタ86は、別の領域にあるというだけで、どちらも素晴らしい内容に仕上げられている。ロードスターの方が、操縦性に深みがあることも事実だが、86の陶酔させられるような体験は捨てがたい。

懐が深く扱いやすく、自在に操れるという絶妙なバランスを実現したモデルは極めて稀有。10年前と同様に86は今でも特別な存在だと思う。とはいえ、それはロードスターにも当てはまる。

2台とも純粋に、ドライビングを楽しみたいというわれわれの欲求へ見事に応えてくれる。BMWポルシェより、遥かに身近な価格で。

今回はトヨタ86以外の選択はない

世代交代を果たした、初代86が2022年の勝者だというのは少々もどかしい結果だった。だとしても、興奮度や乗りやすさなどを鑑みると、今回はそれ以外の選択はないように考えられる。何という結論だろう。

2012年にトヨタ86が英国ベスト・ドライバーズカーへ選出された時、審査員の1人が少し過大評価かもしれない、と口にした。確かに一理あったかもしれないが、その采配は間違いではなかった。

トヨタGT86(86) プロパッケージ(ZN6型/2012〜2021年/英国仕様)
トヨタGT86(86) プロパッケージ(ZN6型/2012〜2021年/英国仕様)

「この価値ある5台と再会して、素晴らしさを改めて確認できました。10年前のトヨタ86は、非常に重要な存在だと感じましたし、ベスト・ドライバーズカーに選ばれるべき存在でもあったと思います」

「それから10年が経ち、やはり正しい判断だったと結論付けられますね」。マット・プライヤーの言葉に、同意できない人はいなかった。

過去10年のベスト お手頃ドライバーズカー 5台のスペック

トヨタGT86(86) プロパッケージ(ZN6型/2012〜2021年/英国仕様)

英国価格:2万8449ポンド(2017年時)
全長:4290mm
全幅:1790mm
全高:1320mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:7.6秒
燃費:11.8km/L
CO2排出量:191g/km
車両重量:1270kg
パワートレイン:水平対向4気筒1998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps/7000rpm
最大トルク:20.8kg-m/6400rpm
ギアボックス:6速マニュアル

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)

英国価格:3万3495ポンド(約562万円)
全長:3995mm
全幅:1805mm
全高:1455mm
最高速度:230km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.5秒
燃費:12.1km/L
CO2排出量:186g/km
乾燥重量:1310kg
パワートレイン:直列3気筒1618ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:260ps/6500rpm
最大トルク:36.7kg-m/3000-4600rpm
ギアボックス:6速マニュアル

フォード・フィエスタ ST(英国仕様)

ホワイトのトヨタGRヤリス・サーキットパッケージ、ホワイトのトヨタGT86(86) プロパッケージ、グリーンのフォード・フィエスタ ST
ホワイトのトヨタGRヤリス・サーキットパッケージ、ホワイトのトヨタGT86(86) プロパッケージ、グリーンのフォード・フィエスタ ST

英国価格:1万8995ポンド(2018年時)
全長:4068mm
全幅:1735mm
全高:1469mm
最高速度:231km/h
0-100km/h加速:6.5秒
燃費:16.7km/L
CO2排出量:136g/km
車両重量:1262kg
パワートレイン:直列3気筒1497ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:29.5kg-m/1600rpm
ギアボックス:6速マニュアル

マツダMX-5(ロードスター) 30thアニバーサリー・エディション(英国仕様)

英国価格:2万8095ポンド(2019年時)
全長:3915mm
全幅:1735mm
全高:1230mm
最高速度:218km/h
0-100km/h加速:6.5秒
燃費:14.5km/L
CO2排出量:155g/km
車両重量:1124kg
パワートレイン: 直列4気筒1998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:183ps/7000rpm
最大トルク:20.8kg-m/4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

ホンダ・シビック・タイプR GT(FK8型/2017〜2021年/英国仕様)

英国価格:3万2995ポンド(2017年時)
全長:4557mm
全幅:1877mm
全高:1434mm
最高速度:271km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:13.0km/L
CO2排出量:176g/km
車両重量:1380kg
パワートレイン:直列4気筒1996ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:320ps/6500rpm
最大トルク:40.7kg-m/2500-4500rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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