テスラ・モデルS
公開 : 2012.06.26 19:46 更新 : 2017.05.29 18:47
■どんなクルマ?
シリコンバレーの若き億万長者が立ち上げたテスラは「世界で最高のクルマを造る」とコメントした。そして、エロン・ムスクは「電気自動車がガソリン・モデルよりも良いことなどありえない、という幻想を破壊する」と言い、モデルSの生産を開始した。
テスラ・ロードスターがロータス・エリーゼのEVモデルでしかありえかなった時点では、モデルSはまだコンセプトカーでしかなかった。しかし、今は違う。モデルSは、電気自動車の重要なプレーヤーとなっているのだ。
既に同社は、来年20,000台の生産計画を立てており、10,000台分のデポジットを受けてとっている。
■どんな感じ?
そのスタイリングは、ジャガーXF、アストン・マーティン・ラパイド、そして新しいフォード・モンデオを足したような感じで、一見すると電気自動車には見えない。何しろダミーのラジエーター・グリルすらあるのだから。
「われわれのクルマの設計は、パワートレインを中心としたブランドを作っているようなものだ」とデザイナー、フランツ・ヴォン・ホルズハウスは言う。「しかし、そのデザインは、一般的にクルマとして良く認知されるようなものでなくてはならかなった。もちろん、将来的にはもっと実験的なデザインも必要となるだろう」と。
最も特徴的なのはその大きなサイズだ。0.4インチほどポルシェ・パナメーラより長く、3インチ幅広い。
インテリアはiPadのような17インチのタッチ・スクリーンが目に付く。これは、エアコンからエア・サスペンションまで集中的にコントロールするためのものだ。そのインテリアのクオリティは十分に納得出来るだけのものがある。そのスイッチにメルセデスのパーツが使われていることにちょっとした驚きを覚えるが。
基本的には5人乗りだが、2人用のジャンプシートがトランクの中にある。また、第2の荷室スペースがノーズにある。それをテスラは”フロント・トランク”と呼んでいる。
電気モーターは、リア・アクスルの間にあり、4インチの深いバッテリー・スタックが床の下にある。現在のところ、4輪駆動の計画はないという。
ロータスで20年間務め上げてきたグレアム・ロバートソンによって、フロント・ダブル・ウィッシュボーン、リア・マルチ・リンクというサスペンションのセッティングは煮詰められた。エア・サスペンションはエントリー・モデルを除いては標準となる。このサスペンションは、マニュアルでその高さを変更することができるというものだ。
われわれがテストしたのは、フラッグシップであるシグネチャー・パフォーマンスだった。それは英国で97,900ドル(778万円)という価格のモデルであり、416bhpと61.1kg-mのパワー、トルクを持つ。0-100km加速は4.4秒、最高速度はリミッターが効く210km/hだ。ちなみに、電気自動車では当たり前だが、ギアボックスはない。
その強大なトルクのお陰で、加速は凶暴ですらある。160km/hまで一気に加速するが、更にその先の領域でもそれは衰えることのない印象だ。更に、その加速の間でも、沈黙に近いコクピットが保たれる不思議な感覚がある。Aピラーまわりで動く風の音と、タイヤの発するロード・ノイズだけが聞こえる空間なのだ。
テスラSは、その2108kgというヘビー級であるにもかかわらず、低い重心であるためにロード・パフォーマンスに優れる。ロールは少なく、機敏で、ステアリングからのフィードバックもしっかりとしている。
21インチのホイールにもかかわらず、素晴らしい乗り心地で、しなやかなフィーリングが伝わる。
■「買い」か?
走行可能な距離は実質的にはまだ確定していない。しかし、アメリカの公式なEPA評価では420kmとある。実際にどのぐらい走れるのかは、われわれは英国でテストするまでペンディングとしたい。
残念ながらテスラ・モデルSが「世界で最高のクルマ」とはいえない。しかし、印象的なクルマであることは間違いない事実だ。テスラは真剣なのだ。
(アリスター・ウィーバー)
テスラ・モデルS
価格 | 97,900ドル(778万円) |
最高速度 | 210km/h |
0-100km/h加速 | 4.4秒 |
燃費 | – |
Co2排出量 | – |
乾燥重量 | 2108kg |
エンジン | 電気モーター |
最高出力 | 416bhp/5000rpm-8600rpm |
最大トルク | 61.1kg-m/0rpm-5100rpm |
ギアボックス | 1速 |