メルセデス・ベンツEQS SUV 欧州発売 2000万円超の高級EV、ついに路上へ
公開 : 2022.11.05 18:05
なめらかなエクステリアデザイン
サイズは、全長5125mm、全幅1959mm、全高1718mmと、全体的に内燃機関搭載のGLSよりもやや小ぶりになっている。ホイールベースはEQSセダンと同じ3210mmで、こちらはGLSより75mm長い。
エクステリアデザインとしては、EQシリーズ特有の滑らかな表面処理を多用している。空気の流れを整え、抵抗を抑えることで航続距離の向上を図ったものだ。
フロントバンパー中央に大きく張り出したブラックパネルグリル(オプションでスターパターン加工あり)、LEDヘッドライト、LEDライトバーなど、他のEQモデルとの類似性を示すスタイリングが特徴的だ。クラムシェル型ボンネットは整備時のみ開けられる仕様で、ウィンドウォッシャー用のフィラーは運転席側のフロントパネルに配置されている。
ウィンドウはサッシュレスではないが、フラッシュ式ハンドルを全車に標準装備。ボディサイドの気流をスムーズにすることで空力効率を向上するというランニングボードもオプションで設定。
空気抵抗係数はまだ明らかにされていないが、フルフラットのアンダートレイの影響もあり、SUVモデルの中でもトップクラスに優れているという。
開発に6年 エンジニアの工夫
搭載されるリチウムイオンバッテリーはEQSセダンと同じもので、フロアパンにパッケージされているため、フロアはほぼフラットな形状となっている。メルセデスによると、重心はSUVモデルの中で最も低いという。
セダンと多くの部品を共有しているが、開発は簡単なものではなかったという。EVA2プラットフォームのチーフエンジニアであるホルガー・エンツマンは、「かなり大変でしたね。6年近くかかりました」と語っている。
「当初からこのような(セダンとSUVに対応する)柔軟性を持つようにプラットフォームを設計したので、GLSやGLEなど大型SUVの経験を反映させることが出来ました」
「セダンよりも地上高が高く、また重くなることについても検討しましたが、車両重量を減らすためにアルミの使用比率を高くして軽量化した部品を多く取り入れています」
エンツマンは、これまでの内燃機関SUVの開発における経験の多くを、EQS SUVの開発(主に差別化)に役立てたと述べている。EQS SUVの開発作業のうち、およそ80%は電動ドライブトレインとは無関係のもので、MBUX、安全装置、シート、電気ワイヤーハーネスなどの部品に重点が置かれたという。
また、メルセデスの次世代プラットフォーム「MMA」をベースにしたEQXXコンセプトからも、技術の一部が応用されている。
「EVA2プラットフォームには、エアロダイナミクスに関する優れたアイデアを盛り込みました。また、インフォテインメント・システムやエネルギー使用量の削減方法、ドライブトレインやステアリングについても、良い学びがありました」とエンツマン。
「EQSセダンでは、開発プロセスの後半6か月で大きな前進を遂げました。風洞実験では小さな効果を発見し、一部のパーツを変更しました。空気抵抗係数を下げるために、アンダーボディカバーをもう少し閉じるようにしたのです」
「最後の1か月で多くの調整を行い、わずかな抵抗も減らすためにスタッフはみな大変な努力をしてくれました。正直なところ、社内の誰もがこのような数値(空気抵抗係数は未公表)を出せるとは思っていませんでしたよ。それでも、何とかやり遂げることができました」
また、EQS SUVはメルセデスのEVとして初めて、専用のオフロードモードを搭載している。エンツマンはAUTOCARに対し、開発におけるオフロードモードの優先順位は低かったものの、暑い地域でも寒い地域でも感銘を受けたと語っている。
「オフロード性能の搭載は、開発における主要目標ではありませんでした。しかし、実際に走らせてみると、スウェーデンの氷上やオフロードコースでも、非常に優れた挙動を示しました」
「この大きくて重いクルマが、凍結した道路をうまくこなすのを見て、わたし達はとても興奮し、少し驚いています。ラスベガス近郊の砂丘、スウェーデンの氷上、その他のオフロードエリアでテストドライブを行い、車両の能力を開発しました。非常に興味深いプロセスでしたし、結果にも大変満足しています」