多くの人が勘違い? 「走行距離課税」真の問題はどこに? クルマと税金を考える
公開 : 2022.11.24 17:05
EV優遇のツケを回収するため?
鈴木大臣の発言は、EVの走行距離課税という発想の可能性を示したものだ。
ここで各種報道やSNSで論点となっているのが、「EVは重量がガソリン車などよりも重い」と決めるような印象を持つ点だろう。
今後、技術が進めば同然、EVに搭載される蓄電池は小型・軽量になってもエネルギー密度が高い技術が確立されることで、EVの重量はガソリン車並みになることが十分想定できる。
それにもかかわらず、現時点でのEV技術をベースに中長期的な税制改正を考えているように見えてしまっていることに対して、ユーザーから疑問の声が挙がっているのだと思う。
また、EVはガソリン車やハイブリッド車のように給油しないので、燃料関連の税金を払っていない。それにもかかわらず重量が重いから道路へのダメージが多いのだからEV特有の走行距離課税を考える、といった発想の流れに対しても、場当たり的なイメージを持つ人が少なくないのだと思う。
次にポイント2つ目の、すべてのクルマに対する包括的な税制改正についてだ。
これは鈴木財務大臣が指摘した、与党での税制改正の議論に直結する。
2022(令和4)年度与党税制改正大綱では、「次のエコカー減税などの期限到来時に、車体課税の抜本的な見直しを前提に、一定の猶予期間を設ける」とある。
この期限とは、2023(令和5)年4月30日を指す。
「移動」を課税論議の中心に……
現時点で車体課税とは、環境性能割(旧:自動車取得税に相当)、自動車重量税、自動車税・軽自動車税の大きく3つを指す。
諸外国と比べて日本は車体課税が高くユーザーにとって負担になっているため是正が必要だと、日本自動車工業会や日本自動車連盟ではこれまで、国に対して提言してきた。
また、国は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「2035年までに新車100%電動化」という達成目標を掲げている。
さらに、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなど新しいサービス・電動化)による「100年に1度の自動車産業大変革」の真っ只中にいる。
そうした中で、車体課税の抜本的な改正に向けて、国が動き出す中で、走行距離に応じた課税という発想だけが切り取られて、その是非について賛否両論が出ている印象がある。
つまり、「所有から共有」という時代の大波を踏まえると、走行距離課税の発想はけっしてEVに限ったことではないはずだ。
論点は、これからの日本で「社会の中で移動をどう捉えるのか?」ということだと思う。
日本では今後、高齢化がさらに進み、また産業構造も変わっていく中で、移動に対する税についてさまざまな立場の人の生活や事業を十分に考えた、国として思い切った税に対する施策が必要なのではないだろうか。