課題山積み 電気自動車との付き合い方を考える 持続可能な社会目指す英国の事例
公開 : 2022.11.07 18:05
再生可能エネルギーはどうやって作っているの?
EVを有意義なものとするためには、再生可能エネルギーへの完全な切り替えが重要である。英国の電力生産量の約半分を占めるまでに成長した再生可能エネルギーは、主に風力発電によるものだ。
政府の発表によると、波力発電や潮力発電はまだ初期段階にあり、22MWの発電能力しかないが、陸上風力発電は最近の集計で4万8487MWと、国内トップに立つ。第2位が1万4143MWの太陽光発電、第3位が洋上風力、第4位が4551MWの植物性バイオマスである。ビクトリア朝時代からある大規模水力発電は1473MWと、貢献度は意外に低い。廃棄物エネルギーと埋立ガスがそれぞれ1337MWと1055MWで、すぐ後に続いている。
そして、再生可能エネルギーには国民全員が関わっている。下水汚泥処理で247MW、嫌気性消化処理で559MWを発電しているのだ。2020年第2四半期、バイオエネルギーと廃棄物は、英国の総エネルギー消費量の14.7%という目覚ましい貢献をしている。
EVでお金を稼げるようになる?
英国や欧州で試行が始まっているV2G(ビークル・トゥ・グリッド)。ピーク時の電力需要バランスをとるために、コンセントに繋がれたEVのバッテリーから電力を取るというものだ。
現在、商用車に限定して試験運用が行われており、日産もE.ON(エーオン、ドイツのエネルギー大手)と提携してこれに参加している。両社は、E.ONの法人顧客であれば年間1万マイルの走行に必要なエネルギー(約5万円相当)を節約できると予測。この数字は、日産リーフの40kWhモデルで、WLTPサイクルの航続距離270km、1マイルあたり0.238kWhの消費、電気代1kWhあたり12.93ペンス(約22.4円)と仮定したものである。
まだ初期段階であり、一般ユーザー向けの計画はまだ発表されていない。V2Gに対応した充電器の価格はどんどん下がってきているが、英国内での利用に影響を与える要因の1つは、コストとスペースだろう。そして、次のステップはV2H(ビークル・トゥ・ホーム)だ。低料金時にEVが蓄えた電力を家庭に供給したり、ソーラーパネルがあればその電力を利用したりすることが可能になる。コスト削減だけでなく、CO2排出量の低減も期待できる。
運転習慣の変化が送電網に影響を与える?
EVの利点の1つは、ガソリンスタンドに足を運ぶ必要がなく、「給油」する場所の選択肢が増えることにあると考えられている。
急速充電器ネットワークはEVの普及に不可欠とされているが、英国で行われたCVEI(消費者、車両、エネルギー統合)試験では、地元の無料公共充電ステーションを利用できるにもかかわらず、参加者は電気代の発生する自宅での充電を選択することが明らかになったという。試験に参加した消費者の大多数は、先述の「スマート充電」を希望すると答えたが、これは路上駐車をする何百万人ものユーザーを考慮したものではない。
もし、大多数のEVドライバーがスマート充電を利用すれば、お金を節約できると同時に、送電網への負荷も減らすことができる。また、ピーク時とオフピーク時の料金体系には人を動かす力があるだろう。人々がいつ、どのように充電するかは、送電網の需要を安定化させる効果がある。