スバル色ポルシェ、なぜ誕生? スバルエンジン搭載「ポルシェ911 GT3 STI」 製作者に訊く
公開 : 2022.11.13 21:10
SEMAショーに展示されたスバルカラーのポルシェ911 GT3が話題に。誕生の背景や製作エピソードを製作者にききました。
エネオスブースに「スバル色ポルシェ」
世界最大の自動車アフターマーケットパーツ見本市「SEMAショー」は今年も2022年11月1日~4日の日程で開催された。
会場はおなじみ、ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)である。屋内展示スペースと広大な駐車スペースを利用した屋外展示スペースをあわせるとおそらく50万平方メートル以上となり、世界トップレベルの展示面積となる。
2000年以降、SEMAショーには日系の出展社が数多くブースを構えるようになった。
トヨタ、日産、ホンダ、レクサスなどの日系自動車メーカーをはじめ、GReddy、テイン、HKS、クスコ、ヨコハマ、トーヨータイヤなど多数の部品メーカーの展示も恒例となっている。
このような中、エネオスや出光といった日本の大手石油元売り会社の米国関連会社も10年以上前からほぼ毎年出展しているのをご存じだろうか?
「なんで日本のガソリンスタンドがSEMAショーに?」と筆者も最初は驚いたが、エネオスや出光はガソリンを販売するのではなく、モーターオイルやEV用フルードなどのオイル関係を全米で市販している。
2社のうち毎年、かなり気合の入ったデモカーを出展しているのがエネオスである。
昨年同様、出光は華々しく活躍するマツダモータースポーツ・マツダDPIのレースマシン1台を展示していたのに対して、エネオスはスバルエンジンを搭載したポルシェ911 GT3 STI、Zパワーを搭載したDAI YOSHIHARA(フォーミュラドリフトのトップレーサーとして2021年まで活躍)の日産フロンティアレーストラック、パイクスピークにエントリーしたテスラ・モデル3レースカー、ワイドボディのダットサン521ピックアップ、そしてコンテストで優勝した1997年アキュラ・インテグラ・タイプRなど合計5台ものモンスターマシンを展示していた。
廃車ポルシェ911 GT3にEJ25エンジン
これらのモンスターマシンの中でもっとも注目を集めていたのが青いスバルカラーのポルシェ911だ。
正式名称は「ENEOSポルシェ911 GT3 STI」。
ボクサーエンジンという共通点を持つ2車がどのような経緯で融合され、パワフルに美しく仕上げられることになったのか?
会場でも多くの来場者がブースに足をとめて熱心に写真を撮ったり質問したりしていた。
ポルシェのボディにスバルのエンジン……日本人ではなかなかその発想すら生み出せないかもしれないが、とにかくこのクルマを作ったビルダーに会ってみたいと思った。
Formula DRIFT PROドライバーであり、DevSpeed Motorsportsのオーナーである著名ビルダーファルーク・クアイさんに話を聞いた。
「今回使用した2007年型911 GT3自体はカーブを曲がりきれずに衝突、足まわりを損傷した個体でした。その状態になると完全な修復は不可能なので、廃車になってしまったのです」
「その状態のクルマをわたしの知り合いのポルシェコレクターがエンジンやトランスミッションの部品取りとして保有していました。わたしはその911 GT3のボディだけを使ってドリフトマシンを作りたいと思い、コレクターに車体だけを譲ってもらうことにしたのです」
「日本車のエンジンを載せたい。というのは最初から決まっていましたが、ハンドリング性能を損ねないためにも、重心が最も肝心な点でした」
「調べを進めていくうちに、インプレッサやレガシィ、フォレスターなど多くのスバル車に採用されている『EJ25』がトランスミッション込みで911 GT3純正よりも170 lbs(約77.1kg)軽いエンジンであることがわかりました。それで車台だけの911 GT3にEJ25を換装することを選んだのです。」