小さなボディに大きなエンジン アストン マーティンV12ヴァンテージ 全身の感覚が覚醒する 前編

公開 : 2022.11.20 07:05

伝統的で上品なアストン マーティンではない

ダッシュボード中央の所定位置にキーフォブを差し込みエンジンをスタートさせると、上質なインテリアと相反する音響に包まれる。エグゾーストから、金属的なザラついた轟音が放たれる。

全長4380mmのボディに巨大な多気筒エンジンが搭載されていることは、技術的なことを知らなくても直感でわかるはず。アイドリング時からタダゴトではない。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(2009〜2013年/英国仕様)
アストン マーティンV12ヴァンテージ(2009〜2013年/英国仕様)

グレートブリテン島中南部の閑静なウォリックシャー州の一般道を走らせると、V12ヴァンテージは格段にうるさく感じられる。回転数を高めず素早く変速しても、農家の石壁にノイズが反響しまくる。

低めの速度域で優しくブレーキペダルを踏んでも、カーボンセラミック製のブレーキディスクは悲鳴のような甲高い音を立てる。伝統的な、上品なアストン マーティンとはいえないかもしれない。

それでも、魅惑的なスタイリングは視覚的な喜びをもたらす。愛すべき英国車として、この土地でなら快く迎え入れてくれる人も多いはず。

農村の路地を抜け原野が広がり始めたら、心地良いアルミ製シフトレバーを2速に落とす。アクセルペダルは適度に重く、V12エンジンの獰猛なパワーを正確に調整できる。

気温が低めでも、ピレリPゼロ・コルサは見事にグリップする。アスファルトを確かに掴みながら、猛烈に加速していく。そのバランスには唸らされる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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