小さなボディに大きなエンジン アストン マーティンV12ヴァンテージ 全身の感覚が覚醒する 前編
公開 : 2022.11.20 07:05
伝統的で上品なアストン マーティンではない
ダッシュボード中央の所定位置にキーフォブを差し込みエンジンをスタートさせると、上質なインテリアと相反する音響に包まれる。エグゾーストから、金属的なザラついた轟音が放たれる。
全長4380mmのボディに巨大な多気筒エンジンが搭載されていることは、技術的なことを知らなくても直感でわかるはず。アイドリング時からタダゴトではない。
グレートブリテン島中南部の閑静なウォリックシャー州の一般道を走らせると、V12ヴァンテージは格段にうるさく感じられる。回転数を高めず素早く変速しても、農家の石壁にノイズが反響しまくる。
低めの速度域で優しくブレーキペダルを踏んでも、カーボンセラミック製のブレーキディスクは悲鳴のような甲高い音を立てる。伝統的な、上品なアストン マーティンとはいえないかもしれない。
それでも、魅惑的なスタイリングは視覚的な喜びをもたらす。愛すべき英国車として、この土地でなら快く迎え入れてくれる人も多いはず。
農村の路地を抜け原野が広がり始めたら、心地良いアルミ製シフトレバーを2速に落とす。アクセルペダルは適度に重く、V12エンジンの獰猛なパワーを正確に調整できる。
気温が低めでも、ピレリPゼロ・コルサは見事にグリップする。アスファルトを確かに掴みながら、猛烈に加速していく。そのバランスには唸らされる。
この続きは後編にて。