一度は復活を遂げた迷(名)車たち 後編 モーリス・オックスフォード ローバーSD1 コード810/812
公開 : 2022.11.26 07:07
各メーカーが全力で創出したクルマのなかには、生産終了後に復活を遂げる例も。英国編集部が特徴的な10台をご紹介します。
モーリス・オックスフォード・シリーズII(1954年)
1954年に発表されたモーリス・オックスフォード・シリーズIIは、伝統的なスタイリングのサルーンだった。英国の保守的なドライバーをターゲットとしており、想定した数を販売することはできた。
モノコックボディだったが、内容は至ってベーシック。コラムシフトを装備し、操縦性は鈍重といえたものの、クラシカルな見た目にはマッチしていた。
オックスフォードはシリーズIIIへ改良されるが、1957年からインドでヒンドスタン・アンバサダーとしても生産が始まり、2014年まで販売が続いた。半世紀を経て、インド人の国民車的存在にまで登りつめた。
シンプルな構造でメンテナンスしやすいという特徴は、動力性能やモダンな見た目よりインドでは重視された。ヒンドスタン・モーターズによって改良が加えられながらも、スタイリングは最後までオリジナルのままだった。
その後、インドは自動車市場を日本のメーカーへ開放。安全や環境に対する規制が強化され、経済は発展し、アンバサダーの役目は無事に終わった。
マニアな小ネタ:高い馬力と低い環境負荷を求めて、ヒンドスタンはエンジンをモーリス製からいすゞ製へ変更。見た目にそぐわず、後にオーバーヘッドカム・ユニットを獲得している。
ローバーSD1シリーズ(3500/1976年)
1976年に発表された5ドアのローバー3500は、親会社のブリティッシュ・レイランドをも救う救世主になる予定だった。高性能で実用性に優れる設計だけでなく、斬新なファストバック・ボディと新鮮味あるインテリアを獲得し、可能性は高かった。
当時の自動車ジャーナリストも、3500の仕上がりを高く評価した。スペック的には目立つところがなかったかもしれないが、操縦性や燃費性能を讃えている。
しかしローバーの復活を妨げたのは、製造品質の低さだった。SD1シリーズのモデルライフは10年間に及んだが、20万台のラインオフに留まっており、充分な成功が得られたとはいえなかった。
その後ブリティッシュ・レイランドは、インド・マドラスを拠点とするスタンダード・モーター・プロダクツへ製造設備を販売。同社はインド仕様として手を加え、スタンダード2000を生み出した。
サスペンションは路面状況に合わせてストロークが伸ばされ、ディーゼルエンジンが主力に切り替えられた。インドでは輸入車に高い関税が掛けられており、国産のスタンダード2000は高い支持を得ると考えられたが、結果的には2年間で3408台しか売れていない。
インド製だとしても価格が高すぎたのだ。ヒンドスタン・アンバサダーのようにはいかなかった。
マニアな小ネタ:英国に住むクラシックカー・マニアのとある兄弟が、スタンダード2000の生産終了後に部品を購入。SD1シリーズの延命に役立てている。