電費効率は小さなホンダe並み BMW iX(2) 長期テスト 1段上の洗練性
公開 : 2022.11.19 09:45
エンジンを売りにする上級ブランドが発売した、フラッグシップBEVのiX。英国編集部が長期テストで実力を検証します。
積算5167km 並大抵のものではない電費
最近は、BMW iXの電費効率の良さに感心している。1kWhあたり何km走行できるのかが、内燃エンジンモデルでいう燃費に相当するのだが、現在の水準では6.0kmを超えればかなり優秀といえるだろう。
iXの場合は5.6km/kWh。車重が2510kgある大柄なSUVで、秀でた動力性能を生む駆動用モーターを搭載することを考えると、BMWの成果は並大抵のものではない。
積算5874km 従来のような個性を獲得できるか
バッテリーEV(BEV)で不安視されることの1つが、従来のクルマのような個性を獲得できるかどうかだと思う。駆動用モーターやバッテリーが複数メーカーで共有されるだけでなく、内燃エンジンとは異なり、独自のチューニングを加えることも難しい。
ボディのデザインを変えただけでは、クルマとして面白みのある独自の個性を創出したとはいえない。既に各メーカーがBEVを販売している状況にあるが、均質化は否定できない状況だと思う。
しかし、BMW iXはそれに合致しない。BEVのドライビング体験は氷のように冷淡だとする人もいるが、それとも一線を画している。
1段上のレベルで完成された洗練性
これまでに、iXで長距離のドライブ旅行も体験した。フランスまでの数100kmの移動もこなしたが、近年では最も快適で疲れ知らずに移動できるクルマだと実感することになった。後日、その内容もご紹介したいと思う。
明らかに弱点だと感じるポイントはない。シート・クッションの具合やドライビングポジションは完璧だし、滑らかで静かな加速や走り、優れた乗り心地、大きな荷室に至るまで唸らされる水準にある。
加速時には、作曲家のハンス・ジマー氏によるサウンドが車内に響く。前回のレポートでもご紹介したが、数週間が経過した今でも飽きることなく楽しめている。駐車場や赤信号から発進する度に、力強い速度上昇とともに聞こえてくる。
また、BEVは洗練性が強みといえるが、iXは更に1段上のレベルで完成されている。ランドローバー・レンジローバーも静かで上質ながら、50年間に及ぶ開発経験によって、そう仕上げられるべきモデルだともいえる。
一方のiXは、BMW初のBEVのSUVになる。それでいてこの完成度の高さなのだから、これから一層素晴らしいモデルが生まれてくるに違いない。大きな期待を抱かせる。