ドライ路面の比較的難しいコースでは、トルク不足を感じる一面があったものの、ハンドリングは3台中トップに躍りでる出来栄えだ。わずかながらのアンダーステアを匂わせつつコーナーを通過し、そこからガスペダルを床まで踏み切っても、徹底してジェントルかつニュートラルな振るまいを見せた。

操舵感覚は楽しいの一言に尽きる。ほかの2台よりもステアリングに伝わる情報量は明確。今となっては絶滅の危機に瀕するMTの操作も気持ちがいい。ちなみにM4はオプションでMTが選択可能ではあるけれど、DCTの方が多いだろう。B4はMTが用意されていない。

M235iに足りないのは、純粋な意味でのボディ・コントロールだ。Mスポーツ・サスペンションを組み合わせていても結果は変わらず、持ちうる能力の限界点近くでバンプを踏めばボディ上屋は上下に変動し、速い速度で走ればパワー不足が露呈する。

しかし支払うべき金額に対して、妥当な仕事をしているか否かは別の話。この手のクルマに関しては議論する価値があるだろう。

数々のクルマをテストした経験があるわれわれは、価格帯に対する大方の基準をわきまえているつもりだ。このクルマはその基準よりも遥かに上を行くレベルにあると言っていい。

そこで気になるのは、’真の’ Mカーとどれくらいの戦いを繰り広げていくのかというところだろう。

M4の存在目的はかなり明確なもの。ボンネットの膨らみを見れば、このクルマがどのような目的を達成しようとしているかは、あまり深く考えずとも分かるはずだ。

ダンパーやステアリング、エンジンやギアボックスのセッティングは、あなたの気分や好みに合わせて変更できるようになっている。エンジンに火を入れれば、深みがあり、また鋭利なサウンドが辺りにこだまする。チューンナップの細やかさと、時代に適応する高効率化を雄弁に語っているようでもある。

道路に連れ出せば、M235iとはまるで違う走りを見せる。M235iのように不思議と笑みが溢れるほどクイックなわけではないのだが、5800rpm前後でやや息が上がるM235iのエンジンに比べて、そこから最高出力を発揮する7000rpmまで高らかに回ってゆく。

なかでも大きな違いがあるのはシャシーだ。M4は他と全く土俵が違うと言わんばかりの身のこなしをする。莫大なトラクションとグリップは秀でた能力の鍵を握り、さらに路面追従性能が王手をかける。