BMW M4 vs BMW M235i vs アルピナB4ビターボ
公開 : 2014.08.25 23:50 更新 : 2017.05.29 19:33
英国に代表される悪路でも大きく姿勢を変えるられることはなく、10分の8程度の力しか出さずとも、路面をしっかりと掴んでいた。
しかしながらこのクルマもすべてが完璧と言うわけではない。何も乗り心地が硬いと言うわけではないのだが、限界に向かってアクセルを踏み込んでいくと、感じやすい一面があるのだ。
潜在的にアンダーステアの傾向を持っているのは頭では理解できるのだが、スロットル・レスポンスに優れているのに、コントロールするのにこちらがかなり気を使わなければならない。
ほとんど気になる程のことではないのだが、たまに電子デバイスが効くよりも先に対処しなければならない時がある。想像よりも、ドライバーに強いる仕事量が多いと感じる向きもあるかもしれない。
ではB4はどうだろうか?
簡単に言うと、M4のような速さがあり、同時にM235iのようなマナーも兼ね備えているといったところだろうか。
インテリアは3台の中で、もっともクラシック。標準のスポーツ・シートは見た目、すわり心地ともにトップである。パドルの代わりに設えられたギア・シフトには慣れが必要だけれど、アルピナのロゴや濃紺の上品な文字盤、美しいステッチの組み合わされるレザーなどを目にすれば、即座に他のBMWとは異なった立ち位置にあると感じる。
ターボのセッティング変更などはほんの一部に過ぎず、B4のエンジンは徹底的に手が入れなおされている。ただしアクラポビッチのマフラーを使用しているにもかかわらず、あくまでエンジン音は控え目。アイドリングは静かだと言っても差し支えないくらい静かなのだ。
特筆すべきはそのトルク。7000rpmまでスムーズに回るエンジンであるけれど、最も光り輝くのはミドル・レンジである。オートマティック・ギアボックスとの相性は抜群で、なんの苦労なく爆発的な加速を見せる様は ’トルク・モンスター’ といっても過言ではない。
マーケティングの観点でいえば、デュアル・クラッチATの方が良いだろうけれど、とにかくB4のコンベンショナルなATの仕事はこちらがうっとりするほどスムーズだ。
もちろん変速速度はM4のDCTの方が優れるのだが、オート・モードでは扱いに慣れが必要。さらに急いでリバースにセットした際の挙動は受け入れがたい。サーキットで走る以外、デュアル・クラッチはあまり必要ない。M235iのファクトリー・カーをニュルブルクリンクで24時間走らせた際も、トルコンATを組み合わせていたが何ら不足はなかった。
話が脱線してしまったけれど、もちろんB4にも不得手な面はある。たとえば、パワートレインやシャシーが寄与する敏捷性はM4に一歩譲る。鼓動を高めてくれるのはやはりM4のようだ。
B4は3台の中でも最もスペックの高いタイヤを履いていたが、不思議なことにM235iの乗り味に近いと感じた。
アルピナがどのように足回りに手を加えたかは分かりかねるが、筆者はサスペンションのレートを上げるだけでなく、柔らかいサイドウォールを用いることによって副次的な乗り心地を底上げしているように感じた。またショック・アブソーバーを柔らかくすることによって凹凸を見事に吸収し、結果としてボディを覆っく動かさずに済んでいるようだ。
限界点ちかくでも、足の動きは寛容でコントロールに苦労することもなかった。結果的にM4のエンジニアよりも良い仕事をしていると思った。