【詳細データテスト】レンジローバー・スポーツ 圧倒的な静粛性 十分以上のパワー しなやかな走り味
公開 : 2022.11.12 20:25 更新 : 2022.12.02 04:42
走り ★★★★★★★★★☆
保守的なオーナーなら、レンジスポーツはディーゼル車を選びたいところだろう。ただ、メーカー的には税制面で有利なPHEVを主軸に据え、個人ユーザーの大多数が電動化モデルを選択するはずだ。そういう流れにおいて、世界的にみてもシェアが少なくなるだろうディーゼルモデルの開発に手落ちがあっても、ランドローバーを責められない。
だが、直6エンジンに火が入るや否や、そんなことはなかったと安心するはずだ。レンジローバーと同じく、このL461型レンジスポーツは機械的な振動やノイズをおどろくほど遮断している。低速で見せる高級車のオーラは、同じクラスに並ぶものがない。エンジンノイズは、中回転域でも押し殺したハミング程度で、感じ取れるバイブレーションはまったくない。
パフォーマンスの実測値は、加速もブレーキングも、いくつかの要素で角を丸めたところがみられる。真にデュアルパーパスな四駆であるがゆえに、このカテゴリーの中でもかなり重いクルマだからだ。さらにタイヤはピレリのM+S対応のオールシーズンで、ライバルが履くようなオンロード最優先の銘柄ではない。
しかも、ギア比はレンジローバーらしいオフロード性能を実現するためにショートめの設定となっている。というのも、ローレンジの副変速機は標準装備されていないのだ。そんなわけで、いまどきの乗用車では珍しく、2速では64km/hに届かない。
それでも、静粛性は高いのに、パワーもドライバビリティも必要十分なだけでなく、ゆとりもある。実用トルクは、ウェイトを御してなお余りあるほど。エントリーレベルのエンジンとしては、文句なく事足りる。
発進はレンジローバーらしく、推進力が繰り返す波のように押し寄せてくる。オフロードでスロットルをオンオフして、スローに走ったり速度を調整したりするのも簡単だ。ただ、絶対的な発進加速を求めると、ややためらいを見せるが。
シフトチェンジは直観的なタイミングで、スムースにギアをつなぐ。エンジンのローエンドでのレスポンスはみごとで、ハイエンドでのフレキシブルさや洗練性は、ディーゼルの水準に照らせばかなりのものだ。
ランドローバーは、テレインレスポンスのメニューにダイナミックモードを用意する。このモード、パワートレインのキャラクターをほどよくシャープにするが、過激なほどには高めない。だが、エンジン音は明らかにデジタル合成したフェイクサウンドが添加され、本当のサウンドがかき消されているのが残念だ。