550マラネロ・ベースの250 SWB RMLショートホイールベースへ試乗 2億6000万円超

公開 : 2022.11.24 08:25  更新 : 2022.11.30 13:27

うれしいオールドスクールな運転体験

オープンゲートにレバーを当てつつ、6速MTを右手で操る。シームレスなデュアルクラッチATが登場する以前の記憶が蘇る。慎重かつ正確に両足と両手を動かす必要はあるものの、油脂類の温度上昇とともに滑らかさが増し、扱う喜びも増していく。

右足でブリッピングしながら、ヒール&トウでシフトダウン。ペダル配置や重み付けは完璧だ。思わず笑みがこぼれる。

RMLショートホイールベース(欧州仕様)
RMLショートホイールベース(欧州仕様)

ショートホイールベースは、スチール製のバックボーンフレーム・シャシーやサスペンション、ブレーキなども550マラネロのものを受け継いでいる。うれしい、オールドスクールな味わいを残している。

アンチロールバーやスプリングは独自開発され、調整式ダンパーはオーリンズ社製が組まれる。公道用のセッティングでは、路面へしなやかに追従していた。それでいて、動的能力は素晴らしい。

アスファルトの欠けた穴などを通過すると、鋭い衝撃が伝わる。酷いバンプではサスペンションが縮み切る場面も稀にあったが、乗り心地は基本的にはマイルドだ。

ステアリングホイールはやや重めで、反応はクイック。上質に仕立てられた細身のリムを通じで、充分な感触が手のひらへ伝わってくる。短いホイールベースを活かし、鋭く回頭していく。

V12エンジンが生み出すトルクは太く、アクセルペダルの加減でコーナリングラインの調整も簡単。比較的柔らかいサスペンションと抑制されたボディロールが相まって、挙動は漸進的で予想しやすい。シャシーのバランスは秀逸だ。

普段使いできるグランドツアラー

トラクション・コントロールが備わるが、スタビリティ・コントロールなはい。フィードバックが豊かだから、限界領域に迫っても扱い難さはない。ブレーキも550マラネロ譲りで、制動力は充分。ペダルの踏み心地も安定していた。

サーキット向けにダンパーを数段階引き締めると、ショートホイールベースは一体感が増し、操縦性にも一層の幅が生まれた。ロードホールディング性が高まり、コーナリング時の安定性も明らかに増す。

RMLショートホイールベース(欧州仕様)
RMLショートホイールベース(欧州仕様)

サーキットをカリカリに攻め込むタイプではないが、非常に面白い。控えめな限界領域とアクセルペダルによる調整域の広さのおかげで、ステアリングホイールの舵角とバランスさせながらコーナーをクリアできる。

1960年代のスポーツカーを操る体験と重なるようだった。250 SWBと同じく颯爽とサーキットのパドックへ乗り付け、そのままコースインしていく。そんな週末の過ごし方も悪くない。

もちろん、夏の休暇で欧州大陸を疾走するのも一興だ。だが、近場のワインディングを楽しめる普段使いできるグランドツアラーでもある。

最終的な仕上げが残っているとRMLの担当者は説明するが、ほぼ完成した状態にある。超高額なレストモッド市場に、魅力的なドライバーズカーが加わったことは間違いない。

僅か30台が製造されるそうで、この希少性や排他性も訴求力を一層高める要素の1つだ。ただし、1台のショートホイールベースが作られる毎に、1台の550マラネロが失われることも意味する。

RMLショートホイールベース(英国仕様)のスペック

英国価格:162万ポンド(約2億6892万円)
全長:4150mm(フェラーリ250 SWB)
全幅:1690mm(フェラーリ250 SWB)
全高:1260mm(フェラーリ250 SWB)
最高速度:289km/h(予想)
0-100km/h加速:4.1秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1700kg
パワートレイン:V型12気筒5474cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:485ps/7000rpm
最大トルク:57.8kg-m/5000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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