まとまり感のある運転体験 トヨタbZ4Xへ英国試乗 新鮮なワンモーション・グリップ

公開 : 2022.11.22 08:25

ワンモーション・グリップの可能性

2023年以降は、電気的に操舵されるバイワイヤー方式の新しいステアリング・システムが、オプションで選べるようになる。ワンモーション・グリップと呼ばれるもので、こちらには飛行機の操縦桿のようなステアリングハンドルが装備される。

見た目が未来的なだけでなく、実際に運転した印象も新鮮だった。ワンモーション・グリップのロックトゥロックは150度しかなく、レシオは可変式。低い速度域や急なカーブではかなり鋭く反応する一方で、高速域や緩いカーブでは穏やかに反応する。

トヨタbZ4X プロトタイプ
トヨタbZ4X プロトタイプ

低速域での反応はクイックで、最初は少し違和感があるかもしれない。しかし反応はダイレクトだから、すぐに慣れるだろう。むしろ1度慣れてしまうと、通常のステアリングホイールの反応が悪く感じることに驚かされた。

筆者が試乗したbZ4Xのワンモーション・グリップは開発途中の段階にあり、さらに滑らかさを増す作業が必要に思われた。それでも、この新しい技術の可能性を垣間見ることはできた。複雑な後輪操舵システムを不要とするかもしれない。

さらにクロスオーバーとして、急勾配での走行をアシストするヒルディセント・コントロールや岩場などで便利な低速クロール・コントロールを実装。サスペンションのストロークは不足なく長く、渡河水深は500mmに対応している。

まとまり感のあるドライビング体験

bZ4Xのドライビングフィールは、素晴らしいわけでもないが、決して酷いわけでもない。全体的にイイ感じだ。

回生ブレーキには、比較的重めの減速感が得られるものと、惰性走行に近いものの2段階の強さが設けられている。どちらも従来のAT車のようにクリープ走行し、乗りやすい。

トヨタbZ4X プレミアエディション(英国仕様)
トヨタbZ4X プレミアエディション(英国仕様)

静止状態からの発進は滑らかで、乗り心地は落ち着いており、通常のステアリングホイールの場合は操舵感も穏やか。姿勢制御は良好で、リラックスして運転できる。

車重は2060kgもあり、スポーティな走りを楽しめるわけではない。そもそもトヨタ・ユーザーの大多数は積極的な走りを求めないはずだから、これで問題ないといえる。

BEVらしく重心位置が低いため、ボディロールは小さい。郊外の道を飛ばしていると、秘めた動的能力の高さが香ってくる。まとまり感のあるドライビング体験だと感じた。

トヨタは社長をはじめ、クルマの運転が好きな人の多い企業だ。bZ4Xのチーフエンジニアは、スーパーカーのレクサスLFA用ローンチコントロールを担当した人物だそうで、合点のいく仕上がりといえるだろう。

トヨタbZ4X プレミアエディション(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万1550ポンド(約855万円)
全長:4690mm
全幅:1860mm
全高:1650mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:6.9秒
航続距離:413km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2060kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:71.4kWh
急速充電能力:150kW
最高出力:218ps
最大トルク:34.3kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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