400GTの美しい後継車 ランボルギーニ・イスレロ S V12を味わうグランドツアラー 後編
公開 : 2022.12.03 07:06
友人も幸せを感じるであろう笑顔
試乗が終わりに近づくにつれ、筆者は悲しい気持ちになってしまったが、オーナーのビルはもっと辛い心境だろう。彼は数年前にパーキンソン病と診断され、運転免許を放棄せざるを得なかった。
その後は友人へ運転を頼み、イスレロ Sと一緒の時間を叶えてきた。アクセルペダルを踏むたびに溢れる彼の笑顔に、友人も幸せを感じているのではないかと思う。
「辛い現実ではありますが、友人と過ごす時間は素晴らしいものでもあります。惜しまれるのは、次の世代へ引き継ぐことができなかったことですね」。とビルが言葉を選ぶ。
「信頼性はわたしが一番良く知っています。たとえクルマに興味があっても、経済的な負担まで息子に託すわけにはいきませんから」。恐らく遠くないうちに、このイスレロ Sは売却されるのだろう。
だが今は、息子と一緒に巡る夏の自動車旅行を計画している。もちろん、このイスレロ Sで。ビルの笑顔が絶えることは、もうしばらくはなさそうだ。 James Elliott(ジェームズ・エリオット)
※この記事のオリジナルは、2017年5月に執筆されたものです。