クライスラー・デルタ(2011年)

当時のコメント「普通とは少し違うが、お勧めするにはあまりに気がかりが多い」

デルタという車名は1990年代にランチアで使われていたもので、ラリー界に多大な影響を残した伝説的なクルマである。2010年代に登場した3代目デルタだが、初代のスポーツ性はどこへやら。英国など一部の市場では、ランチアではなくクライスラーブランドから販売されたこともあり、全く普及しなかった。

クライスラー・デルタ(2011年)
クライスラー・デルタ(2011年)

フィアット・ムルティプラ(1998年)

当時のコメント「ムルティプラのようなクルマをもっと世に出すべきだ。家族の移動手段としては、天才的な作品である」

奇妙奇天烈なフィアット・ムルティプラは、6人乗りの樽型ボディに、ゴミ箱や棚、ドリンクホルダーを詰め込んだ、利便性と独創性の塊であった。「すべてのものに美しさがある。だが、誰もがそれを見ているわけではない」という、孔子の言葉を引用した広告もあった。言い得て妙である。

フィアット・ムルティプラ(1998年)
フィアット・ムルティプラ(1998年)

BMW X5(2000年)

当時のコメント「クロスオーバーのコンセプトを極限まで追求したモデル」

BMWには先見の明があった。スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)という未確立の分野に賭けただけでなく、勇敢にも、本当にスポーティなクルマを作ろうとしたのだ。見た目は少々野暮ったいものの、その走行性能、ハンドリング、そして悪路走破性は見事なものだった。X5は、現在ではBMWの主力モデルとなっている。

BMW X5(2000年)
BMW X5(2000年)

メルセデス・ベンツ・バネオ(2002年)

当時のコメント「その多用途性は、子供たちだけでなく、動き回る忙しい人たちにも魅力的に映るはずだ」

この超実用的なクルマは、メルセデス・ベンツの商用車部門による予想外の作品である。決してセクシーとは言えない車体に、「バネオ(Vaneo)」という、これまた質素な車名を刻んだ。残念ながら、超高級車のマイバッハ57と同じくらいしか売れなかった。

メルセデス・ベンツ・バネオ(2002年)
メルセデス・ベンツ・バネオ(2002年)

プジョー1007(2005年)

当時のコメント「1007はコンパクトなボディと、上質なインテリアを両方備えている」

4人乗りの小型MPVだが、ドアはたったの2枚(しかも両側スライド)という変わった出で立ちのプジョー1007。狭い場所でも駐車しやすいようにショート&トールサイズにまとめられ、明るいボディカラーを揃えていた。

プジョー1007(2005年)
プジョー1007(2005年)

改めて考えてみると、BMWミニやフィアット500よりも合理的で実用的である。しかし、刺激のないデザイン、鈍重なドア、ジジくさいオーラ(失礼)、そしてこの2台の活躍によって、1007の魅力は見失われたのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ブレンナー

    Richard Bremner

    英国編集部
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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