日産キャシュカイ(デュアリス) e-パワー

日産はしばしば、思慮深く他社とは異なることを実行する。大きく目立つことはないかもしれないが。その好例といえるのが、シリーズ式ハイブリッドを人気の中型SUVへ搭載した、新しいキャシュカイ(デュアリス) e-パワーだ。

1.5L 3気筒ターボエンジンをボンネット内に搭載するが、フロントタイヤとはつながっていない。キャシュカイを走らせるのは190psの駆動用モーターのみ。それでいて、バッテリーEV(BEV)やPHEVがはらむ課題や弱点から開放されている。

日産キャシュカイ(旧デュアリス) e-パワー(英国仕様)
日産キャシュカイ(旧デュアリス) e-パワー(英国仕様)

e-パワーで優れている点は、BEVと同等の洗練されたアクセルレスポンスを実現していること。回生ブレーキの強さも変更できる。

2030年か2035年にハイブリッド搭載モデルが販売終了を迎えるまで、駆動用バッテリーやモーターにアップデートを加えながら、e-パワーは生き残る予定にある。BEVへの移行を滑らかにするように。

熱効率にも優れ、ブレコンビーコンズ国立公園のチャレンジングな道を積極的に走らせても、燃費は17.0km/L前後をコンスタントに維持。普通に一般道を運転している限り、18.0km/Lを超えることも珍しくない。

発進加速の勢いも、まるでBEVのように鋭い。右足の力加減へ正確に反応しながら、スピードを高めていく。

サイズと品質、価格のベストなバランス

試乗車には、新世代のインフォテインメント・システムが搭載されていた。現在はトップグレードのみの採用だが、追ってすべてのキャシュカイへ普及する予定にある。

タッチモニターが中心のインターフェイスではあるが、メニュー構造は理解しやすく操作性はいい。描かれるグラフィックが少々漫画チックではあるものの、表示自体はクリアで読みやすい。

日産キャシュカイ(旧デュアリス) e-パワー(英国仕様)
日産キャシュカイ(旧デュアリス) e-パワー(英国仕様)

インテリアの設えも褒められる。グレートブリテン島の中西部にある、日産サンダーランド工場の製造品質の高さを物語っている。

もちろん、改善を求めたい部分はゼロではない。ステアリングホイールのレシオは丁度良く、重み付けも良好ながら、もう少し路面からの感触が欲しい。回生ブレーキから摩擦ブレーキを伴う移行時には、制動力に若干の段付きがある。

サスペンションには、もう少し落ち着きが欲しい。特に低速域での路面の凹凸が苦手な様子。細かな入力は、巧みにいなしているようではあるが。

それでも、e-パワーのパワートレインはシームレスでサイレント。この洗練性は、ベントレーに並ぶのではないかとさえ思う。

利便性を重視したSUVでありながら、日産としてはドライバーズカー寄りの楽しい走りも実現している。スポーティと呼べる程ではないが、ブレコンビーコンズ国立公園のワインディングで、その事実を再確認することができた。

2021年の発売以来、大きな成功を収めていることにも納得だ。日産キャシュカイ e-パワーは、適度なサイズと品質、価格という、ベストなバランスにある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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