世界に誇るべき英国車 アストン マーティンDBS 日産キャシュカイ(デュアリス) e-パワー 英編集部選の5台 中編
公開 : 2022.11.26 09:46
日産キャシュカイ(デュアリス) e-パワー
日産はしばしば、思慮深く他社とは異なることを実行する。大きく目立つことはないかもしれないが。その好例といえるのが、シリーズ式ハイブリッドを人気の中型SUVへ搭載した、新しいキャシュカイ(デュアリス) e-パワーだ。
1.5L 3気筒ターボエンジンをボンネット内に搭載するが、フロントタイヤとはつながっていない。キャシュカイを走らせるのは190psの駆動用モーターのみ。それでいて、バッテリーEV(BEV)やPHEVがはらむ課題や弱点から開放されている。
e-パワーで優れている点は、BEVと同等の洗練されたアクセルレスポンスを実現していること。回生ブレーキの強さも変更できる。
2030年か2035年にハイブリッド搭載モデルが販売終了を迎えるまで、駆動用バッテリーやモーターにアップデートを加えながら、e-パワーは生き残る予定にある。BEVへの移行を滑らかにするように。
熱効率にも優れ、ブレコンビーコンズ国立公園のチャレンジングな道を積極的に走らせても、燃費は17.0km/L前後をコンスタントに維持。普通に一般道を運転している限り、18.0km/Lを超えることも珍しくない。
発進加速の勢いも、まるでBEVのように鋭い。右足の力加減へ正確に反応しながら、スピードを高めていく。
サイズと品質、価格のベストなバランス
試乗車には、新世代のインフォテインメント・システムが搭載されていた。現在はトップグレードのみの採用だが、追ってすべてのキャシュカイへ普及する予定にある。
タッチモニターが中心のインターフェイスではあるが、メニュー構造は理解しやすく操作性はいい。描かれるグラフィックが少々漫画チックではあるものの、表示自体はクリアで読みやすい。
インテリアの設えも褒められる。グレートブリテン島の中西部にある、日産サンダーランド工場の製造品質の高さを物語っている。
もちろん、改善を求めたい部分はゼロではない。ステアリングホイールのレシオは丁度良く、重み付けも良好ながら、もう少し路面からの感触が欲しい。回生ブレーキから摩擦ブレーキを伴う移行時には、制動力に若干の段付きがある。
サスペンションには、もう少し落ち着きが欲しい。特に低速域での路面の凹凸が苦手な様子。細かな入力は、巧みにいなしているようではあるが。
それでも、e-パワーのパワートレインはシームレスでサイレント。この洗練性は、ベントレーに並ぶのではないかとさえ思う。
利便性を重視したSUVでありながら、日産としてはドライバーズカー寄りの楽しい走りも実現している。スポーティと呼べる程ではないが、ブレコンビーコンズ国立公園のワインディングで、その事実を再確認することができた。
2021年の発売以来、大きな成功を収めていることにも納得だ。日産キャシュカイ e-パワーは、適度なサイズと品質、価格という、ベストなバランスにある。