過激な850psの六輪駆動 アポカリプス・ジャガーノート6x6へ試乗 ベースはラムTRX

公開 : 2022.11.26 08:25

2番目のアクスルを独自設計し六輪駆動化

静止状態でアクセルペダルを深く倒すと、スーパーチャージャーから悲鳴が上がり、排気音が1オクターブほど低くなる。即座にパワーが伝達され、六輪ドリフトが始まる。挙動は漸進的で予想しやすい。

1日の試乗が終わりに近づいた頃、隣りに座っていたガッタスに試して良いか確認したから大丈夫。巨大なピックアップトラックがドリフトする様子に驚く筆者を、笑みを浮かべながら眺めていた。

アポカリプス・ジャガーノート6x6(北米仕様)
アポカリプス・ジャガーノート6x6(北米仕様)

巨大なボディにぶら下がる4本のリアタイヤが、3車線分を跨ぐようにスライドする。ガッタスと彼のスタッフは、こんな悪ふざけのために毎日頑張っている。

実際のところ、ジャガーノート6x6のユーザーの多くは、ワイルドに目立つことが主な目的かもしれない。しかし、限界領域まで能力を発揮させているドライバーもいるという。砂丘を豪快に突き進むことなど容易い。ガッタスは、そんな乗り方を愛している。

また彼は、思う存分運転を楽しんだら、アポカリプスのワークショップへ1度クルマを戻して欲しいと考えている。カスタムの耐久性を評価するために。

アポカリプスは、ボルトで固定できる2番目のアクスルを独自設計することで、六輪駆動を実現。フォードの9インチ・デフハウジングを加工し、後ろ側にプロペラシャフトが追加されている。

オリジナルのリアアクスルは後方へ移動され、3番目のアクスルとして働く。最適なサスペンション・ジオメトリーを得られるよう、伸ばされたシャシーのコントロールアーム・ポジションなども改良済みだという。

ラジエターは巨大な荷室へ移設 人気は上々

850psという大出力に耐えうるべく、ラジエターはフロント側から取り外され、巨大なリアの荷室へ移設。冷却性能も向上してある。ただし、ドライブトレインの内部抵抗などは計測していない。馬力は、エンジン単体が発生するものだそうだ。

ジャガーノート6x6に30万ドル(約4350万円)を支払うような人は、パレードの見世物のような注目度の高さだけでなく、豪華さや快適性も重視する。そのため、天井の内張りには星空のように光る加工が施されているし、専用の刺繍でインテリアは飾られる。

アポカリプス・ジャガーノート6x6(北米仕様)
アポカリプス・ジャガーノート6x6(北米仕様)

赤外線カメラの映像で、外の様子を確かめることもできる。映画、地獄の黙示録に影響を受けたようなユーザーには、ピッタリかもしれない。

いかにもアメリカンなコンバージョン・ピックアップトラックだが、この地でも内燃エンジンの終焉が近づきつつある。排気ガス規制は厳しくなる一方で、既にバッテリーEVのピックアップも登場している。

フォードの次期型F-150 ラプターRは、ラムTRXへの最後の内燃エンジンによる対抗モデルになる可能性はある。もう少しデトロイトによるピックアップトラックの覇権争いが繰り広げられそうだが、そう長くは続かないだろう。

チューニングメーカーが受ける影響はもう少し先とはいえ、ジャガーノート6x6へ興味を抱いたのなら、早めに問い合わせした方が良いかもしれない。かなりの人気なのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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