全方位で能力向上の2代目 フォード・レンジャー・ラプターへ試乗 V6ターボで292ps

公開 : 2022.12.07 08:25  更新 : 2023.03.15 10:29

公道が最適な居場所だとは感じにくい

だが実際のところ、従来より魅力的なV6エンジンを獲得したとはいえ、アスファルトでドライバーに興奮を誘うロードカーとまではいえない。実際、今回の試乗会で指定されたルートは、殆どがオフロードでもあった。

まず、最高出力が若干乏しい。市場によっては400馬力近くまで開放されるようだが、欧州仕様は排出ガス規制の都合で292psへ制限されている。非力ではないものの、2454kgある車重のおかげで余裕までは感じにくい。

フォード・レンジャー・ラプター(欧州仕様)
フォード・レンジャー・ラプター(欧州仕様)

アクセルペダルを踏み込むと、かなりのボリュームのノイズが放たれる。それに伴う加速力は、そこまででもない。

組み合わされる10速ATの仕事ぶりは、メカ任せではさほど印象が良くない。マニュアルモードでドライバー自らギアを選べば直感的に運転できるものの、それでもマッスルカー級に速いわけではない。

そのかわり、乗り心地は素晴らしい。リジッドアクスルを備えたピックアップトラック特有の落ち着かなさは、レンジャー・ラプターでは無縁だ。

フォックス社のアダプティブダンパーは、初期の反応が滑らかで漸進的に動くため、一般道に存在する殆どの不整をフィルタリングするように鎮める。姿勢制御にも優れ、大きなボディでありながら正確にラインを選んでいける。

ステアリングホイールの感触も良いが、スポーツサルーンに乗り慣れたドライバーが満足するほどの、シャシーバランスやグリップは得ていない。サーキット前提のハイエンド・スポーツカーのように、レンジャー・ラプターも公道が最適な居場所だとは感じにくい。

能力を輝かせるには相応の環境が必要

フォードの高性能部門、フォード・パフォーマンスは、バッテリーEVのマスタング・マッハE GTでSUVの走りを追求しようとした。彼らの感心が、レンジャー・ラプターにも広げられれば、面白い仕上がりになるかもしれない。

現代の高性能モデルと同様に、秘めた能力を輝かせるには、相応の環境が必要になることはレンジャー・ラプターでも同様。実際に条件が許せば、本当に驚くほどの豪快な走りを見せつけてくれる。

フォード・レンジャー・ラプター(欧州仕様)
フォード・レンジャー・ラプター(欧州仕様)

砂漠のように広大な荒野や、ジャンピングスポットのある放棄された採石場、誰もいない林間のラリーステージなどが近所にあれば理想的だ。しかし、現実的には英国では叶えがたい。

ちなみにCO2の排出量は、V8エンジンを積んだBMW X5 Mよりも多い。最大積載量が1tを超えれば英国では商用車登録が可能になるが、レンジャー・ラプターはそれが難しいようだ。

オフロードでの能力は、驚くべき水準にある。そんな運転を日常的には楽しめないとしても、ワイルドなピックアップトラックを好んで選ぶような人は、何らかの理由を見つけて大金を支払うのだろう。

フォード・レンジャー・ラプター(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万8900ポンド(約977万円)
全長:5381mm
全幅:2028mm
全高:1922mm
最高速度:178km/h
0-100km/h加速:7.9秒
燃費:7.2km/L
CO2排出量:315g/km
車両重量:2454kg
パワートレイン:V型6気筒2956ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/5500rpm
最大トルク:49.9kg-m/2300rpm
ギアボックス:10速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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