5代目はなかったかも…… 変わる「ハイブリッド」取り巻く環境 新型トヨタ・プリウス誕生の背景
公開 : 2022.11.19 05:45 更新 : 2023.01.11 16:54
「普通のクルマ」化した背景
なぜ、4代目の時点で5代目の方向性が読み切れなかったのか?
それは、CASEが今後、社会全体に対して、そしてユーザーとクルマとの関係について具体的にどのような影響を及ぼすのかが見通せなかったからだろう。
見方を換えると、4代目以前のプリウスの進化、つまり初代から3代目までの進化については予想しやすかったといえるかもしれない。
あらためて、初代から3代目の進化を考えてみると、1997年登場の初代は自動車エンジニアリングとしては、ガソリンエンジンとモーターとの理想的な融合を求めた机上論から試作でとどまっていた技術が、ついに量産に辿り着いたという自動車産業史に残る大きな1歩だった。
ただし、ユーザー目線でみれば、回生ブレーキの操作性に過敏さが残り、いわゆるカックンブレーキといった感じの制動力が気になるなど、改良の余地はまだ大きかった。
次いで2代目になると、操作性という面、またパッケージングでも「普通のクルマ」として扱えるようになった。
そうした中、米西海外の有名俳優や学識者などが地球環境問題に対する意識の高まりからプリウスを称賛し、自ら日常生活の中で使うようになる。
その後、プリウス支持の動きは全米に拡がると同時に、世界各地にも熱烈なプリウスファンを生み出していくことになる。
これまでとは違うスタート地点に
本格的なグローバル展開を受けて、トヨタとしてはプリウスの走行性能と燃費性能、そしてパッケージングをさらに向上させる必要が出てきたことで、3代目に向けた道筋が自然と見えてきた。
こうして、現時点からプリウスの歴史を筆者の世界各地での実体験をもとに振り返ってみると、初代から3代目までの進化は、ハイブリッド車の黎明期、普及期、そして拡大期という流れの中で、トヨタとしてはプリウスの未来図が描きやすかったはずだ。
そして迎えた4代目では、ハイブリッド車としての進化のみならず、CASEというさまざまな領域への進化を模索する船出となった。
CASEの中でも、2010年代後半からBEV(電気自動車)シフトが一気に進み、グローバル市場でのハイブリッド車の立ち位置が大きく変化していく。
そうした中で、5代目プリウスの製品としての方向性は、単なる4代目の技術進化にとどまらず、トヨタはプリウスという製品性を抜本的に見直さぜるを得なくなったのだと思う。
プラットフォームとパワートレインは、4代目や他のトヨタ車との共有性をもとに改良しているが、5代目は明らかに初代から4代目までの流れとは違う。
ハイブリッド車もプラグインハイブリッド車も同一デザインの4ドアスポーツクーペ。プリウスは今、これまでのプリウスとは違うスタート地点に立った。