【詳細データテスト】モーガン・スーパー3 色濃い三輪の味わい 意外に魅力的なエンジン 雨は御用心

公開 : 2022.11.19 20:25  更新 : 2022.12.02 04:01

走り ★★★★★★★★★★

フォード由来のドラゴンエンジンが、どれくらいキャラが立っていると思うかは、3ホイーラーに乗ったことがあるかどうかで変わる。三輪のモーガンにはじめて乗ったというテスターは、スタートボタンの爆撃スイッチ的なカバーを跳ね上げ、重いクラッチを踏み込んで自然吸気3気筒を目覚めさせると、ポルシェケイマンGT4RSほどではないが、カリスマ性のきわめて高いエンジンの背後に座っていると思えたはずだ。

最新のパワープラントに比べれば、かかるまでの間がわずかに長く、うつろなガラガラという音が響く。これにドラマティックな印象を加えるのが、右側のみを通るエキゾーストだ。3000rpmを超えると、3気筒に期待する911の半分的なキャラクターが増す。しかし、魅力的な粗さは残っている。

Vツインの独特なフィールには及ばないが、直3ユニットはなかなか個性的。このエンジンの実力を存分に引き出すなら、ヒールアンドトウの習得は欠かせない。
Vツインの独特なフィールには及ばないが、直3ユニットはなかなか個性的。このエンジンの実力を存分に引き出すなら、ヒールアンドトウの習得は欠かせない。    LUC LACEY

それはまるで、古き佳きVツインに似せようとしているかのようだ。テスターによっては、アンバランスなドコドコ音が恋しいという声もあったが、EVやおとなしい4気筒ターボが当たり前となった時代にあって、これに不満をぶつけるというのは礼儀知らずだとすら思える。

このエンジンのパワーデリバリーが、スーパー3へ完璧なまでにマッチしているのも、文句がないと思える理由だ。とにかくよく回りたがり、高回転域で本領を発揮する。いっぽうで低速トルクもかなりあり、おまけに車両重量が思いっきり軽いので、どのギアを選んでいても速さと力強さを感じられる。

もっとロングなギアリングにできたかもしれないが、われわれとしてはクロスレシオのままロードスターのギアボックスを積んだことを歓迎したい。おかげで、より回転を上げて、ブリッピングを多用したシフトチェンジを楽しめる。これを叶えてくれるのが、完璧なペダル配置と、驚くほどストロークが長く軽いが、タイトで満足感のあるシフトのアクションだ。

余談ながら、スーパー3を速く走らせるのに、回転合わせは欠かせないスキルだ。というのも、シフトダウンして、この必須の処置を手際よく行わないでクラッチをつなぐと、1本しかない後輪は容易にロックするからだ。重ねて言うが、ペダルはヒールアンドトウが非常にしやすい配置だ。それだけに、右足を多少忙しく働かせることをサボっていい口実は見つけづらい。

こういうクルマでは、客観的なパフォーマンスそれ自体は二の次になるものだが、それでもどれくらいのパワーがあるのかを知っておくに越したことはない。駆動輪にオールシーズンタイヤ1本しか使っていないクルマで急発進するのであれば、とにかく気にするべきはトラクションのマネージメントだ。ほぼドライの路面でも、2500rpmも回せば、わずかな手に負える程度のホイールスピンが発生する。

ギアボックスは、各ギアを素早く使い切るが、2速に入れて激しくパワーオンすると、またホイールスピンが起きる。最終的には、ゼロスタートでも追い越し加速でも、その速さはほぼフォード・フィエスタST並みだ。

小さい接地面は、加速時にどうにか使うのは十分楽しいが、急制動が必要な場合には無視できない要素となってくる。113km/hからの完全停止に59.3mを要するというのは目も当てられないようなものではないし、3ホイーラーよりは改善を見ている。それでも、最新のコンパクトカーの水準からすれば長い。ハイパフォーマンス系モデルに及ばないのはいうまでもないことだ。

モーガンの名誉のために言うなら、ブレーキング初期のフィールは直観的だ。しかも、フロントがロックしても、すばらしくまっすぐ進んでくれる。

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