£30,000(520万円)前後で買えるベスト・ドライバーズ・カーは?

公開 : 2014.08.27 23:50  更新 : 2017.05.29 19:48

ゴルフRへと話を移そう。ゴルフがハイテク機能を満載したおかげで、自分のテクニックに関係なく、’勝手に’ ゴルフが走って行くような印象を抱いている人が多いのではないだろうか。

しかしながら九十九折を目一杯に攻めたてれば、研ぎ澄まされたレースカーというよりもむしろ、フォーカスに近いフランクなクルマであることが分かる。速さで言うならば、フォーカスはついて行くのがやっとだし、300psの四輪駆動車らしい安定感や安楽さがある。ただしわずかながらに楽しさはフォーカスに一歩譲ると感じた。

ただしその差はかなり小さいもの。総じてゴルフRは速いだけでなく技術満載の楽しいクルマだといえるだろう。

操舵感覚は直感的でシャシーは柔軟性に富んでいる。レース・モードにすればエグゾースト・ノートは大きくなり、アクセル操作による姿勢の変わり方も繊細になる。フォーカスにも同じようなシステムが用意されているけれど、ゴルフRの方が自然で完成度は高いと感じた。

2.0ℓのエンジンからは300psもの出力を発生することができるが、その数字ほどの炸裂感は極力抑えられている躾だ。事実、フォーカスほどドライバーを煽り立てる感覚はなく、また実用性もワゴンであるフォーカスの方が一歩上をゆく。したがって、クルマの持ちうる ’能力’ という観点で見ればフォーカスの方が優れているといえるのだが、ひとつひとつの完成度の奥深さから言うとゴルフの方が優勢だ。

フォーカスには自らを全面的にアピールしようとする華美さがあるのに対して、ゴルフRはあくまで控え目に構えている。そのディメンションは街乗りで力を発揮し、ウェット路面ではもちろんのこと、ドライ路面でもすぐれた4WDシステムのおかげで安心感がある。

いとも簡単に高みへとたどり着くことのできるゴルフを降り、続いてはBRZに乗り込むことにする。BRZはルックスこそ低く構え、いかにもスポーティーではあるが、今回の候補車両のなかでもっとも非力で、直線での勝ち目はない。

サーキットを走らせればフォーカスに遅れをとるし、そもそも自然吸気であるために、2.0ℓのエンジンを載せているにも関わらず力不足を感じさせられることが多い。

その反面もっとも光輝くのはコーナーでのこと。コーナーの頂点でアクセルをほんのわずかに操作するだけで、フロントがラインをきっちりとトレースしながらもリアが穏やかに流れ始めるのだ。

優れたバランスとグリップの少なさがうまく働き合っているからこそなし得る技で、これを味わいながら運転するのはとにかく楽しい。持ち直しが不可能に思えるほどのアングルに陥ってしまったところからでも、見事に修正することができるのだ。

ほとんどのテスターがカメラが向けられていないところでも事あるごとにドリフトを繰り返していた、と聞けばいかにBRZを操ることが楽しいかがお分かりいただけるだろう。

とても生き生きとしていることから、シャシーの能力を楽しむことを目的としているクルマだと言っていい。思いのままに操れる快感は、他のどのクルマにも代えがたい喜びをもたらしてくれた。

速く、短い時間で移動したいのであれば電車や飛行機に乗ることをおすすめする。また柔らかい乗り心地や、優雅さ、荷室容量や適切な後部座席をもったクルマの方がいいならば、さっさと他をあたったほうがいい。

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