£30,000(520万円)前後で買えるベスト・ドライバーズ・カーは?

公開 : 2014.08.27 23:50  更新 : 2017.05.29 19:48

しかし本質的な運転の楽しみを味わいたいのであれば、BRZが真摯に向き合ってくれるはずだ。

その延長線にあるのがロータス・エリーゼ。さらなる快楽を求める純粋主義者、あるいは唯美主義者ならば心から満足できるに違いない。ただしもちろん、乗りこなすには技量がいるし、運転する前にもある程度の勉強が必要なクルマだ。

ルーフを所定の位置にセットするのにも時間が掛かるし、セットした後にはケータハムよりも乗り降りは難しい。ルーフの有無に関わらずロード・ノイズは盛大にキャビンに入り込むし、NAやターボに関係なくエンジンやギアボックスもどこか味気ない。

日常使用において差し支えないはないだろうか? もちろん買い物にいくことはできるが、ハードコアなクルマの信者以外にはおすすめできない。まともなトランクを持たないのだから、当然といえば当然ではあるけれど。

ただしハンドリングは、フェラーリポルシェよりも優っていると言っても、まったく言い過ぎではない。最高のステアリングを手にしたいと思うのならばエリーゼを購入することが最良の選択であり、日常的な不便を我慢してでも乗る価値がある。

巧みにキックバックが排除され、豊富なフィードバックを与えてくれるハンドリングとは何ぞや、というのを体験したい向きにはまさに絶好のクルマである。それだけではなく、時にリムジンに匹敵するほどの柔らかい乗り心地と、隆起の激しい路面での安定感との両立ができている点もエリーゼのもつ偉大な長所である。

1998年にエリーゼがデビューして以来、揺るぎないファン層を獲得したことには、やはりそれなりの理由があるのだ。モデル・チェンジが施されるごとに洗練度合いは増し、今や他のライバルが追従し得ないところにまで上り詰めたと言えるだろう。

そこでアリエルはどのようにして、われわれを魅了するのだろう。もちろんこのクルマには最初から実用性など微塵も期待してはいない。しかし容赦無い天気にも関わらず、筆者が最も長い時間運転し、しかも降りるのを惜しいとおもったクルマだということは最初に伝えておかなければなるまい。

それに候補車両のなかで最も感触のいいギアボックスを持っており、またエリーゼよりも遥かに軽く、しかもLSDを装着している(エリーゼはテスト車両にはオプション装着なし)ため、存分にアクセルを踏み込む事ができたし、狙ったラインを正確にトレースすると言う点ではBRZよりも能力が高かった。

降りしきる雨の中、幾度となく山を上り下りして、ステアリングを握る手は寒さで変色してしまったけれど、それでもなおこのクルマから降りたくないと思えるほど楽しかった。

仮にダウン・シフトに手間取って、思うようにコーナー進入することが出来なかったとしたら、その分の見返りをまざまざと味合わされることになる。いかにドライバーのテクニックが問われるかを感じる瞬間である。

この記事の初めに、優劣を決めるため、あるいは勝者を導き出すためのテストではないと言った。それにこれほどキャラクター性豊かな役者が揃えば、例えば幅広い能力があるからフォーカスの勝ち、またはゴルフは完璧であるから勝ちと言うようにどのクルマも勝者になり得るのだ。

BRZは日常で苦労することなく使用できるうえに文句なしに楽しいし、エリーゼだって他のクルマには真似できないような個性がある。アトムに関しては色々と説明するまでもなく最も愉快なクルマなのだ。

これらうちのどれか私が買うならばゴルフRを選ぶだろう。使い勝手は当然問題ないし、たくさんのキミックが用意されているからだ。またBRZやフォーカスに比べて洗練されているからでもある。

最も大事なのは、ゴルフRはゴルフGTIとは全く違うアプローチをしている点である。見た目は、’もう一つの’ ホットなゴルフのようにみえるかもしれないけれど実際は全く違う。言うなればもっとも過激なファミリーカーとも言えるだろう。

オール・シーズン(全天候型)のクルマではなく、オール・リーズン(すべての点で理屈にかなった)クルマこそ楽しいのである。’楽しい’ クルマの方程式が完成した。

(アンドリュー・フランケル)

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