物流に最適? 水素で走る大型トラック 英スタートアップが試作車公開

公開 : 2022.11.22 06:25

英国のスタートアップ企業HVSが、水素燃料電池を搭載したゼロ・エミッションの大型商用車を公開しました。将来的には、40トンクラスの大型トラックを発売する計画です。

ゼロ・エミッションの大型トラック

英国のスタートアップ企業であるハイドロジェン・ビークル・システムズ(HVS:Hydrogen Vehicle Systems)は、ゼロ・エミッションの水素燃料電池トラックを発売する計画を明らかにした。

2017年に設立されたHVSは、水素と電気を利用した商用車開発に注力している。スタッフは水素および電気業界の出身者が多く、会社を率いるのはCEOのジャワド・カーシード(Jawad Khursheed)氏だ。

HVS社がデモンストレーションとして試作した水素燃料電池トラック
HVS社がデモンストレーションとして試作した水素燃料電池トラック    HVS

同社が今回公開したのは、5.5トンの試作トラックで、水素燃料電池システムを搭載している。シャシーは社内で開発されたまったく新しいもの。将来的には、40トン級のゼロ・エミッションの大型商用車(HGVと呼ばれる)の発売も計画している。

パワートレインとしては、水素燃料電池と電力貯蔵システム、回生ブレーキを備えており、これらは同社独自の制御システム「Semas」によってマネジメントされ、「クラス最高レベルのエネルギー消費効率と耐久性」を実現するという。

HVSによれば、水素燃料電池は一般的なバッテリーEVよりも航続距離が長く、最大積載量も大きいうえ、燃料補給が迅速であるとのこと。ルートや道路状況、運転スタイルにもよるが、航続距離は500km以上になるという。

また、トラックから排出されるのは水蒸気のみで、有害なガスは排出されないとしている。

デザインにも注力しており、空気抵抗を減らすことで長距離走行時の燃費を改善。乗降がしやすく、キャビン内のスペースも使い勝手の良いものになっているそうだ。

同社のジャワド・カーシードCEOは、次のように述べている。

「この技術デモンストレーション(試作トラック)は、画期的な水素燃料電池商用車の設計と先進のパワートレイン技術を紹介し、当社のHGVモデルの先駆けとなるものです」

「当社のゼロ・エミッショントラックは、グリーン水素(水力、風力、太陽光などの再生可能エネルギーで製造した水素)を動力源としており、物流業界の脱炭素化に向けた重要な役割を担っています」

「水素は長距離輸送に最適なエネルギーであり、既存の主要輸送網に簡単に組み込める水素ステーションによって、迅速な補給が可能です」

このトラックは、英国内で引き続き開発が行われ、新たなパイロット生産施設の建設も視野に入れている。HVSは、工場の操業開始後は600人以上の雇用を創出するとしている。

また、英国は右ハンドルだが、左ハンドル仕様の発売も計画されている。HVSは、水素燃料電池トラックの発売時期を明らかにしていないが、道路で目にするのは数年先になりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    Move Electric UK

    Move Electric UK

    英国の純EV専門メディア
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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