GクラスのEV版に試乗してみた メルセデス・ベンツEQG 走破性の高さに脱帽

公開 : 2022.11.23 06:05

メルセデス・ベンツの新型EV「EQG」のプロトタイプに同乗し、オフロードのテストコースを試しました。360度ターンや正確なトルク制御など、EVならではのパフォーマンスは見事と言わざるを得ません。

次世代Gクラスに同乗体験

メルセデス・ベンツEQGプロトタイプの実力を少しでも不安視していたのなら、われわれ報道陣に見せることはなかっただろう。

エンジニアによる説明の後、助手席に座った取材班は、初期開発テストの真っ只中に放り込まれた。

メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)
メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)

自動車メーカーがこれほど早く新型車に触れることを許してくれるケースは、めったにない。コンセプトカーとして公開されてから1年余り、2024年に発売されるEQGがどのようなものかを、早くも直接目にすることができた。

開けた砂利道を軽快に走り抜けると、テストコースはやがて赤茶けた土や大きな岩が露出したトレイルへと変わっていく。メルセデス・ベンツが「クリーパーモード」と呼ぶ走行モードでは、4基の電気モーターがローレンジ付き2速トランスミッションを経由して各車輪にスムーズに駆動を伝える。

その際、電気的な鳴動はない。トラクションコントロール・システムによる電気的なノイズもない。ただ、タイヤが踏む岩やホイールハウスの内側に当たる小石の音が、周囲の自然を感じさせる。

ドライブトレインの洗練度は、オフロード車というより高級セダンに近く、EQGの内面からラグジュアリーな空気が伝わってくる。

今回のテストコースでは、多くの区間で忍耐が要求された。あるところでは、3つの車輪でバランスをとりながら、シーソーするように走る。またあるところでは、急な岩場を蜘蛛のように這って進む。

このような危険な状況にもかかわらず、EQGが圧倒的なトラクションを発揮し続けるのは、開発がすでに十分に進んでいるためで、ディーゼルやガソリンエンジン搭載のGクラスと同等の能力を持っているように思われた。

自社開発の電子システムにより、Gクラスの3ロック式ディファレンシャルを電気モーターで再現し、最もトラクションのかかる車輪に集中的にパワーを送ることができる。

メルセデスが新たに立ち上げたサブブランド「Gクラス」の責任者、エメリッヒ・シラーが自らEQGを繊細に導き、岩場を越える場面もあった。その落差は手ごわい。しかし、アクスルのアーティキュレーションとスプリングの可動域の広さによって、止まらずに走り続けることができるのだ。

大柄だが小回りの効くボディ

しかし、安全な道に出る直前、大きな岩がアンダーボディにぶつかり、全身が震えるような衝撃を受けた。「こんな時に備えて、バッテリーケーシングの外装材を新たに開発したのです。もし、スチールのケーシングだけだったら、今頃は不安になっていたかもしれませんね」とシラーは言う。

EQGのオフロードでの俊敏性は、従来のGクラスよりも小さな旋回半径によって、非常に顕著なものとなっている。また、1979年の初代モデル誕生以来の特徴である、高い着座位置、直立したフロントガラス、切り立ったサイドガラスは、悪路でも優れた視認性を発揮する。

メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)
メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)    AUTOCAR

その後、砂に覆われた広いワインディングロードを走り、130km/hを超えるスピードに到達する。ここでは、EQGの洗練されたエアサスペンションが素晴らしい働きを見せ、段差や起伏を素早く吸収し、ロール角の最小化に貢献している。

試乗の終盤、シラーはEQGプロトタイプを砂利道に停め、ダッシュボード上のボタンを押し、左側のステアリングホイールのパドルを引っ張った。「これがGターンと呼ばれるものです」と言って彼がアクセルを踏み込むと、わたし達はその場で360度回転させられてしまうのだ。このGターンは、左右のモーターをそれぞれ逆回転させることで、戦車のような超信地旋回を可能にしたものだ。

「Gターンは、当初は『あったらいいな』という程度の機能で、まったく必要ないものだと思っていました。しかし、テストしてみると、オフロードの狭い状況下で実用的なメリットがあることがわかり、市販モデルに搭載することにしました。でも、サプライズはこれだけではありませんよ」

歴代のGクラスがそうであったように、この新型EQGも伝説的なオーストリアのシェークル山を制覇すべく開発が進められている。生産拠点に近い全長5.5kmの厳しいトレイルにおいて、生産開始前に300回のテスト走行が予定されている。

発売まで約2年、EQGにはまだ多くの謎がある。しかし、現時点でも、これほどまでに悪路走破性に優れた電動オフローダーは他にないと言っていいだろう。困難な地形や急斜面を乗り越え、岩だらけのトレイルを下りるその姿は、まさに驚くべきものだ。電動で重量は3トンを超えるかもしれないが、舗装路を離れたときの能力と俊敏性は、まさにGクラスそのものであり、素晴らしいと言わざるを得ない。

記事に関わった人々

  • グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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