GクラスのEV版に試乗してみた メルセデス・ベンツEQG 走破性の高さに脱帽

公開 : 2022.11.23 06:05

性能面では妥協を許さず

メルセデス・ベンツはこのように、新型EQGの耐久性テストを本格的に始めている。4年間の開発プログラムの折り返し地点にあたり、複数のプロトタイプがテストに投入されている。今回取材班が体験したのも、その1台だ。

昨年初めて公開されたEQGは、メルセデスの象徴的な存在であるGクラスのEV版で、2024年に発売される予定だ。Gクラスブランドの責任者エメリッヒ・シラーは、「EVのGクラスは最初から、オンロードでもオフロードでも内燃機関車と同等以上の性能を持つべきだと決められていました。性能面で妥協はしたくなかったのです」と語る。

メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)
メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)

EQGは、最新世代のGクラスをベースとし、スチール製のラダーフレーム・シャシーをEV向けに改良。メルセデスの長年のパートナー企業であるマグナ・シュタイヤーが生産する予定である。

テスト中のプロトタイプは、現行のGクラスと同じスクエアなボディを保持しており、ひと目でそれと分かるフォルムとなっている。フロントバンパーやグリルなどは、EV独自のデザインが採用されている。

シラーによると、「内燃機関モデルと同様に、ボディは8点でラダーフレームに接続されている」という。

メルセデス・ベンツの他のEQモデルと同様、フロントのラゲッジルーム(フランク)は存在しない。充電ケーブルは、従来のスペアタイヤがあった場所に設置されたロック付きボックスに収納できる。

パワーユニットは4基の電気モーターで、それぞれ独立して車輪を駆動する。これは、メルセデスAMGが2013年に限定生産したSLS E-Cellを参考にしており、現在のEQモデルの中では唯一のセットアップである。

このような4モーターレイアウトは、米国のEVスタートアップ、リビアンも「R1」で採用している。シラーは、「オフロード性能とオンロードの快適性を兼ね備えた無敵のクルマ」を作り上げるべく、EQGに採用したと話す。

「4モーターレイアウトをめぐって、集中的に議論が行われました。非常に複雑かつ高価なシステムです。しかし、2モーターではディファレンシャルロックが必要になり、電子システムと機械システムの統合が求められます。3モーター(フロントに1基、リアに2基)だと、オフロードで性能をフルに発揮できません」

4モーターならではの可能性

フロントモーターは、アクスル内の低い位置に取り付けられる。リアモーターは、EQGのために特別に開発されたド・ディオン式リアアクスルの内側に搭載され、「優れたトラクションと柔軟性の高いサスペンション」を実現するという。

各モーターは、高速・低速域に対応する2速トランスミッションを介して、各車輪に個別に駆動力を伝えることができる。

メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)
メルセデス・ベンツEQGのプロトタイプ(テストコースにて)

走行モードとして、従来の「エコ」、「コンフォート」、「スポーツ」に加え、オフロード向けに「トレイル」、「ロック」、「サンド」が用意される。

さらに、オフロード走行を容易にするため、Gクラスのロックディファレンシャル(前後アクスルに2つ、トランスファーケースに1つの計3つ)の働きを再現することも可能だ。不安定な路面でトラクションを維持するために、駆動力を1つの車輪に集中させることができる。

シラーは、4モーターレイアウトの最大の利点として、スロットル操作の正確性を挙げている。

「信じられないほど正確なのです。各車輪の駆動を個別にコントロールすることで、まったく新しいレベルの能力を得られ、オフロードでの可能性がさらに広がりました。1か月ごとに最新のプロトタイプを走らせるのは、本当に楽しいものです。最高の電動オフローダーだと思います」

ダッシュボードに設置されたあるボタンを押すと、「Gターン」と呼ばれる旋回が行われる。左右の車輪を逆回転させることで、戦車のようにその場で360度ターンができるのだ。ステアリングホイールのシフトパドルで、左旋回か右旋回かを選択することができる。

また、フロントモーターのパッケージングをコンパクトにすることで、前輪の回転角を大きくし、既存のGクラスよりも「優れた」回転半径を実現している。

記事に関わった人々

  • グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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