新型トヨタ・プリウス フロントガラスの「傾斜」が凄い! それでもプリウスに見えるワケ

公開 : 2022.11.26 21:50

新型プリウスは、フロントウインドウが寝ています。まるでスポーツカーのようです。それでも「プリウスに見える」デザインの妙を探ります。

5代目 なぜあの形になった?

執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

トヨタが新型プリウスをワールドプレミアした。

5代目となる新型の開発にあたって、豊田章男社長はタクシー専用車かOEM供給モデルとして、多くの台数を送り出してカーボンニュートラルに貢献する、コモディティ(必需品)化を提案したという。

新型トヨタ・プリウス(プロトタイプ:外板色マスタード)
新型トヨタ・プリウス(プロトタイプ:外板色マスタード)    宮澤佳久

だが、開発責任者の大矢賢樹氏を中心とした開発グループは「多くのお客様に乗って愛されるクルマづくりがしたい」という思いから、「愛車(LOVE)」という方針で開発していくことになった。

電動化にはさまざまな選択肢が増えた現在だが、新型プリウスは「みんなの手が届くエコカー」という立ち位置を守るべく、パワーユニットはハイブリッドとPHEV(プラグインハイブリッド車)という選択肢をキャリーオーバーした。

スタイリングも、時代の流れから、SUVやミニバンも検討されたという。

だが、開発陣はプリウスの伝統的なスタイルを進化させて、カッコいいクルマにしたかったと話す。目指したのは、“プリウスのアイコンを進化させた”デザインだったのだ。

そんなボディデザインの概要について、担当した山下太一氏に話を伺った。

寝かせたフロント 頂点の位置に注目

新型プリウスのボディサイズは、現行型と比べると、全長は25mm長く、全幅は20mm幅広いが、全高は40mmも低い。ホイールベースは50mm延長されたが、オーバーハングはフロントが25mm長くなり、リアは50mm短縮されている。

いわゆる「富士山型」のサイドビュー(トヨタではトライアングルシルエットと呼んでいる)は踏襲しながらも、より低く、長いボディシェイプとなった。しかも、よりスタイリッシュなプロポーションに進化している。

現行世代(4代目)のプリウスは、トライアングルシルエットの頂点が前寄り。
現行世代(4代目)のプリウスは、トライアングルシルエットの頂点が前寄り。    AUTOCAR

特筆すべきは、フロントウインドウの傾斜角だろう。

正式な角度は公表されていないが、トヨタ車でいちばん傾斜角の強い、レクサスLCのものに匹敵するほどの傾斜角が与えられている。

とはいえ、プリウスはスペシャルティカーではない。乗り降りで頭をぶつけないか? 視界は大丈夫か?

そこで、現行型プリウスを改造してフロントウインドウに同様の傾斜角を与えたモデルを作り、視界や乗降性についてテストを重ねた結果、実用的に問題ないとして採用されたのだという。

トライアングルシルエットも、現行型ではピーク(頂点)がやや前寄りにある、少しくずれたデザインであったものを、2代目や3代目と同様にピークを後方に戻して回帰させている。

車高は低められているものの「3代目と似ているなぁ」と思わせるのは、そのあたりにもあるようだ。

記事に関わった人々

  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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