【詳細データテスト】BMW M4 速さと快適性を両立 軽量でも装備充実 シートは標準仕様がベスト

公開 : 2022.11.26 20:25  更新 : 2022.12.02 03:06

走り ★★★★★★★★★☆

CSLは、単に40psアップしただけのM4以上のものが感じられる。ドライコンディションのテストコースで計測した0−97km/hは3.6秒、0−161km/hは7.3秒。ゼロヨンは、10年前なら正真正銘のスーパーカーでなければありえないタイムだ。

標準装着されるカップRタイヤそのもののグリップが、この発進加速に大きく貢献しているのは間違いない。しかし、スタンダードなM4コンペティションが、昨年のロードテストで161km/hへ到達するのに1秒以上多くかかっていたことを考えると、このCSLのポテンシャルがどれほどのものか、その理解に近づけるだろう。価格の近い、やはりドイツ製の特別なスポーツカーであるポルシェ718ケイマンGT4 RSでも、たっぷり1秒は遅いのだ。

ブーストアップによるM4コンペティションとの出力差は40psだが、よりハードなタイヤやマウント、チタンマフラーなどが、単なるパワーアップ以上の違いをCSLにもたらしている。
ブーストアップによるM4コンペティションとの出力差は40psだが、よりハードなタイヤやマウント、チタンマフラーなどが、単なるパワーアップ以上の違いをCSLにもたらしている。    LUC LACEY

CSLにあってポルシェにないものは、もちろんターボチャージャーがもたらすトルクだ。しかも、生半可な太さではない。パワーデリバリーは、最新のMモデルでは当たり前のようだった超リニアなキャラクターに比べると、ブーストの効きが明確。それだけに、わずかながらターボラグが気になってしまう。

低回転からでは、大きな負荷をかけても、エンジンのレスポンスはやや眠たげ。完全に目覚めるのは2500rpmで、ふたつのターボが回り出してから。そこからは、ドライバーのキドニーをグッと押さえつけるような加速をみせる。

ギア固定での加速タイムを見れば、それがいかほどのものかわかるだろう。6速で64km/h以下から加速しても、エンジンは元気に回って車体を引っ張る。ターボラグがあるといっても、1980年代のようなものではない。さらに、ボディにかかる空気抵抗が増してきても、加速の伸びは衰えず、ピークに達するのは113〜145km/hあたりだ。

言うまでもないことだが、普通にドライビングしていれば、エンジンのわずかなラグが露呈するようなことはない。スロットルを踏み込むたびに、一瞬の間を置いてから突進するさまは、このクルマのキャラクターにドラマティックさを付け加えるのみで、ドライバビリティに悪影響を与えることはない。

さらに、新採用したチタンエグゾーストによって排気音に加わった音色は、歓迎したい要素だ。CSLのストレート6は負荷をかけると、通常のM4より飾らないメカニカルなタービンの唸りを聞かせる。デジタル合成のエンジン音はCSLのほうがあからさまではなく、シフトダウン時の咆吼にはリアルなエッジが感じられる。つまり、すばらしい音だ。

低速域で不器用にパワーオンしたり、取り回したりした際には、スナッチや唐突なショックが、エンジンやギアボックスから出ることがある。その原因は、明らかに硬さを増したマウントだ。非難しようと思えばできるが、われわれの経験から言えば、うんざりするほどひどいと感じることはめったになかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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