【詳細データテスト】BMW M4 速さと快適性を両立 軽量でも装備充実 シートは標準仕様がベスト

公開 : 2022.11.26 20:25  更新 : 2022.12.02 03:06

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

BMWが現行のG82型M4を導入した2020年末、シャシーチューニングの狙いのひとつにホイール荷重の変動抑制を掲げていた。当時、それはやや謎めいた表現に思えた。だが、それは引き締まった乗り心地とホイールコントロールをよりなめらかでプログレッシブなものとし、さらにバンプを乗り越える際の攻撃的な感じや落ち着きのなさは抑えたままにすることを言い換えたものだ。

M3とM4の標準モデルは、昨年の試乗でその狙いが見て取れた。対して今回のCSLは、これこそが真の証明だといえる仕上がりだ。ダンパーをコンフォートモードにしておくと、しなやかな乗り心地とハンドリングの落ち着きは、ハードコアなモデルに対する先入観をいい意味で裏切ってくれる。これほどアグレッシブな見た目で、本気のサーキットユースも想定していながら、乗り心地もハンドリングも洗練されたクルマには、めったにお目にかかれない。

B級道路で走らせるM4 CSLは、ガチガチというより張りつめているといったほうがいい感触。速度を上げると、すばらしいしなやかさと沈着さを両立させてみせる。ステアリングはダイレクトで、しかもインフォメーションが豊富だ。
B級道路で走らせるM4 CSLは、ガチガチというより張りつめているといったほうがいい感触。速度を上げると、すばらしいしなやかさと沈着さを両立させてみせる。ステアリングはダイレクトで、しかもインフォメーションが豊富だ。    LUC LACEY

英国によくあるなだらかなカントリーロードでは、サスペンションは弓の弦のように張りつめたフィールだ。小〜中程度の突き上げなら、すばらしくなめらかに吸収し、M3やM4のGTSのようにシートの上で身じろぎさせられるようなことはない。

それでいて、必要とあれば波長の長い動きに対するダンピングも、短いストローク一発でみごとに減衰してしまう。さらに、速度をかなり上げると、跳ねたりナーバスだったりするより、むしろ安心感を覚えるくらい落ち着いている。

そのため、公道でもサスペンションをハードなモードにしたほうがいいんじゃないかと思えてくる。ただし、それをする価値を見出すには、路面がかなりスムースでなくてはならない。

ステアリングには、かなり細密なフィールを手元に感じさせる。その点では、通常のM4を大幅に上回る。ネガティブキャンバーを強めたことで、舵を切るほどにフロントタイヤの接地性が上がるのだが、極端なダイレクトさが出ることはまったくない。操舵感はナチュラルで直観的。自信とフィードバックをふんだんに与えてくれる。

テスト車に装着されたカップ2Rのグリップレベルは、熱が入れば使いきれないくらい高いが、冷えると注意が必要になるくらい低くなる。この手のタイヤを公道で使うと、一般的にみられる傾向だ。

しかし、このCSLのドライバーエイドは、タイヤが効果的に機能しない場面もうまくカバーしてくれる。もっとも、お好みによっては同じミシュランでも、もっと普通のパフォーマンスタイヤを選ぶことが可能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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