グランドフィナーレに相応しい アウディR8 V10 GT RWDへ試乗 最終仕様は620ps

公開 : 2022.11.30 08:25

重要視された専用サスペンションの開発

インテリアでは、2脚の軽量なカーボンシェル・バケットシートが身体をガッチリ保持。赤いステッチが随所に施され、シリアルナンバーが刻印された専用プレートが特別感を高めている。

車重は、R8 V10パフォーマンスRWD比で20kg軽い1570kg。主に軽量なシートと鍛造アルミホイールで達成したという。

アウディR8 クーペV10 GT RWD(欧州仕様)
アウディR8 クーペV10 GT RWD(欧州仕様)

車高が落ちる、調整式のコイルオーバー・サスペンションはR8に初採用。スプリングとダンパーのレートが引き上げられただけでなく、自宅でも減衰力を伸長側と収縮側で18段階から選べる。重心を下げることにも貢献する。

アウディは、このサスペンションにかなりの費用と手間を投じたようだ。シャシー開発に関わる技術者、ローランド・ワシュカウ氏は、車高調の足まわりを提供することが重要な要素だったと説明する。

「最終バージョンを、ベスト・ドライバーズR8にしたいと考えました。お別れを告げるモデルとして、価値あるものだと思います」

果たして、その仕上がりは鮮鋭。今回はサーキットのみの試乗となったが、ニュートラルで好バランスのシャシーが生むシャープなコーナリングはそのままに、従来のR8以上にエネルギッシュに感じられた。

試乗車のサスペンションは最も引き締まった状態にあり、身のこなしは目に見えてタイト。とても敏捷な反応を実現している。

筆者が従来から顕著な変化を感じたのはトランスミッション。フル加速時でも容赦なくズバズバとシフトアップを繰り返す。極めてドラマチックだ。

グランドフィナーレに相応しい最終仕様

本域で周回を始めると、7段階に調整されるトルク・リア・ドライブモードが効果を発揮する。新技術とはいえないものの、若干路面が濡れた状態では2段階目で自然な振る舞いを楽しめた。

ドライバーが操縦していると実感できる、テールスライドを許してくれる。それでいて、安全マージンもしっかり残されている。

アウディR8 クーペV10 GT RWD(欧州仕様)
アウディR8 クーペV10 GT RWD(欧州仕様)

一方で、積極的にドリフトへ持ち込もうとすると、若干の違和感もなくはない。2段階目は安定志向にあり、筆者が自らテールスライドを誘おうとしているのと同時に、コンピューターの制御も重なり干渉しているような印象だった。

ステアリングフィールは、マクラーレンポルシェ911が叶えている繊細さには届いていない。手のひらへのフィードバックは少なく、シャシーやシートに伝わる情報から、挙動を確かめがちになる。しかし、反応の正確さは素晴らしい。

アウディR8は、これまでポルシェ911ほど究極的に磨き込まれた走りの質感は備えていなかった。それでも、日常生活で頼れるミドシップ・スーパーカーであり続けた。

今回の試乗はサーキット限定だったため、R8 GT RWDの公道での性格がどのように進化したのか理解できてはいない。とはいえ、しなやかな親しみやすさを残しつつ繊細さを研ぎ澄ませたようだから、過去最高のR8に仕上げられた可能性は高い。

まさに、グランドフィナーレに相応しい最終バージョンといえそうだ。ちなみに、333台の限定生産となる。

アウディR8 クーペV10 GT RWD(欧州仕様)のスペック

英国価格:約20万ポンド(約3320万円/予想)
全長:4429mm(R8 V10パフォーマンスRWD)
全幅:1940mm(R8 V10パフォーマンスRWD)
全高:1236mm(R8 V10パフォーマンスRWD)
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:340g/km
車両重量:1570kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:620ps
最大トルク:57.5kg-m/6400-7000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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