ランボルギーニ・ウラカン、最終章へカウントダウン 「テクニカ」が示した先進性・普遍性とは

公開 : 2022.11.28 06:45

革新と普遍性 響き合う「美しさ」

その美しさ、そして端正な佇まいは、今回撮影のロケーションに選ばせていただいた高級旅館、山梨県甲府市の常磐ホテルのエントランスにも実に良く似合う。

この旅館の庭園は、アメリカの日本庭園情報誌で常に上位にランキングされ、日本庭園ランキングで2012年、2013年には3位の座に輝いた実績がある。

ウラカン・シリーズのシャープな意匠は、日本の「折り紙」に着想を得ている。普遍的な美しさのある景色とマッチするから奥深い。
ウラカン・シリーズのシャープな意匠は、日本の「折り紙」に着想を得ている。普遍的な美しさのある景色とマッチするから奥深い。    神村聖

デザイナーのフィリッポ・ペリーニは、ウラカンやアヴェンタドールのデザイン時に、常にその鋭いシェイプを生み出すために、日本の「折り紙」を意識していたというから、今回のウラカン・テクニカも、折り紙の鶴の如く、この景色にはぴったりとくるのが当然といえば当然なのだろう。

その基本デザインをテクニカのために見直したのは、現在のチーフ・デザイナーである、ミーティア・ボルケート。

先日ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの場で会った彼の話によれば、リニューアルの基本コンセプトはより伸びやかなデザインを意識させること。

そのためにフロントバンパーの造形やカーボンファイバー製のエンジンフード、固定式のリアウイング等々を新たにデザイン。リアクオーターパネルのパネルも取り外すなど、さまざまなリニューアル策を施している。

もちろんこれらの作業はエアロダイナミクスの向上にも貢献しており、テクニカのダウンフォース量は最大値で35%増加しているということだ。

切り取りたい、感性に訴える“ひとコマ”

インテリアのフィニッシュも、スポーティな感覚に持ち溢れている。

装着されるスポーツシートは、その座り心地もホールド性も十分に満足できるもの。ボディカラーと同色のアクセントカラーがシートやトリムに入るのも、キャビンを明るく演出してくれる大切な要素。

インテリアはボディ同色の刺繍を施した。固定式の専用ウイングが存在感を放つリアビュー。その下から、新意匠のエグゾーストパイプが顔を覗かせる。
インテリアはボディ同色の刺繍を施した。固定式の専用ウイングが存在感を放つリアビュー。その下から、新意匠のエグゾーストパイプが顔を覗かせる。    神村聖

メーターパネルは、ANIMA=ドライブモードを変化させることでそのデザインも同時に変わる趣味性の強いものだ。

ミドに搭載されるエンジンは、おそくはウラカンの後継車には継承される可能性が低いと思われる、5.2L仕様のV型10気筒。

その歴史を振り返れば、ガヤルドのファーストモデルの5L仕様で、わずか500psの最高出力で始まったこのエンジンだが、途中排気量拡大などのチューニングを受け、このテクニカにおいては前でも触れたとおり640psを発揮。

それに7速DCTを組み合わせ、後輪のみを駆動するところが、これもまたテクニカのドライブにおける大きな楽しさといってよいだろう。

V10自然吸気ランボ、クライマックスへ

ミドのV型10気筒エンジンの発する官能的なサウンドを存分に味わうことは、今回は残念ながらできなかったが、それでも耳はいつまでもその力強くビートを刻むBGMを忘れることはない。

電動化によって、ランボルギーニはより高いパフォーマンスも、そしてより高い環境性能を得ることもできるだろう。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(撮影協力:常磐ホテル 山梨県甲府市湯村2-5-21)
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(撮影協力:常磐ホテル 山梨県甲府市湯村2-5-21)    神村聖

唯一の不安はそのサウンドがどのように変わってしまうのか。

ガヤルド、そしてウラカンで親しんだV型10気筒自然吸気、そしてアヴェンタドールで体験したV型12気筒自然吸気。それらのみを搭載したミドシップスポーツの時代はまもなく終わりを告げる。

ランボルギーニの次なる一歩。

おそらくは来年以降、続々と誕生してくるだろう新世代のファイティングブルに、今はまず大きな期待を寄せようではないか。

ウラカン・テクニカは、その佇まい、そしてそこから発せられるオーラの中で、それを我々に強く訴えかけてくれるモデルだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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