今さら聞けない! 冬の運転で気をつけるべきこと クルマの準備・対策を万全に

公開 : 2022.11.29 06:05

冬用タイヤの装着義務

道路が積雪・凍結している場合、夏用タイヤを装着したまま走行すると法令違反となる。道路交通法第71条に基づいて、各都道府県(沖縄県を除く)は積雪・凍結した道路ではタイヤチェーンや冬用タイヤの装着を義務付けている。滑りやすい路面でも安全に走行するための「運転者の遵守事項」とされており、違反すると罰金が科せられてしまう。

これとは別に、警察や道路管理者(高速道路会社など)が実施する「冬用タイヤ規制」や「チェーン規制」もある。気温が下がってきたり、寒冷地や降雪地帯に出かけたりする場合は迷わず冬用タイヤへ交換し、タイヤチェーンを車内に常備しておこう。なお、冬のドライブの注意点については後で詳述する。

冬用タイヤの装着義務
冬用タイヤの装着義務

海外ではどのように対応しているかも、軽く紹介しよう。英国では現在、寒い季節に冬用タイヤを装着することは法律で義務づけられていないが、ドイツなど欧州の北寄りに位置する国々では装着が義務となっている。当然ながら観光客にも適用されるのでご注意を。ドイツでは10月からイースターまでの間、冬用タイヤに交換するのが一般的だ。

フィンランドやスウェーデンなどの北欧諸国では、道路状況にかかわらず、寒い時期には冬用タイヤの装着が義務付けられている。

冬用、夏用、オールシーズンタイヤの違い

オールシーズンタイヤとの違いについても説明しておこう。英国のような比較的温暖な国や地域に向けて開発されるオールシーズンタイヤは、1年を通して使用できるように冬用タイヤと夏用タイヤの要素を組み合わせている。

乾燥した暖かい路面ではもちろん、低温でも硬くならずにグリップ力を発揮するよう作られている。タイヤ表面は、冬用タイヤと同様にたくさんのサイプが刻まれている。

冬用、夏用、オールシーズンタイヤの違い
冬用、夏用、オールシーズンタイヤの違い

「オールシーズン」という名称から、雪の上でも問題なく走れると考える人もいるかもしれない。しかし、あえて悪い言い方をすれば、オールシーズンタイヤは「器用貧乏」なタイヤだ。暖かい季節には夏用タイヤほどの性能は得られないし、寒い季節には冬用タイヤほどの性能は得られない。

なお、高速道路で冬用タイヤ規制が実施されている場合、冬用タイヤ規制に対応した商品(側面にスノーフレークマークという雪のマークがついている)であれば、通行が可能となる。ただし、圧雪路や凍結路面には十分に対応できないことがあり、チェーン規制下では当然タイヤチェーンの装着が必要だ。

冬用タイヤと四輪駆動車

四輪駆動車とは、4本すべての車輪にエンジンからの動力を伝えるもので、4WDやAWDとも呼ばれる。軽自動車からミニバン、SUVまでさまざまな車種に設定されており、起伏の激しい地形や滑りやすい路面でも安定した走りを見せてくれる頼もしい存在だが、万能というわけではない。冬は四輪駆動車にも冬用タイヤを装着しよう。

AUTOCAR英国編集部は、四輪駆動車でも冬用タイヤが必要かどうかを検証するため、冬用タイヤを装着した前輪駆動車(FF)と、夏用タイヤを装着した四輪駆動車を比較する実験を行った。車種は同じで、駆動方式とタイヤの種類だけを変えてテストしている。

冬用タイヤと四輪駆動の比較
冬用タイヤと四輪駆動の比較

雪に覆われた路面では、停止状態から50km/hに達するまでの発進加速は四輪駆動車(夏用タイヤ)の方が速く、トラクション面では明らかに優位に立っていた。しかし、カーブや交差点に差し掛かると形勢は逆転する。

減速するとき、四輪駆動車は前輪駆動車に比べて何の優位性もない。四輪駆動車は一般的に車体が重い(部品数が多い)ので、むしろ不利になる。30km/hから完全に停止するまでのブレーキングテストでは、前輪駆動車(冬用タイヤ)の方が四輪駆動車よりもはるかに短い距離で停止した。

コーナリングテストでも、結果は似たようなものだった。四輪駆動車はコーナリング時の横加速度が0.17Gしか出なかったのに対し、冬用タイヤを履いた前輪駆動車は0.23Gに達した。つまり、後者の方がグリップがよく働いているということだ。この差は意外と大きく、冬用タイヤは夏用タイヤよりも雪上でのコーナリンググリップが35%も多いということを示している。

こうしたブレーキングやコーナリング性能の違いが、事故を回避できるかどうかの分かれ目になっているとも言えよう。四輪駆動車に冬用タイヤを装着すれば鬼に金棒かもしれないが、たとえ前輪駆動車であっても十分に性能を発揮するのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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