ネオクラV8サルーン BMW M5 メルセデスE 55 AMG ジャガーSタイプ R マセラティ・クアトロポルテ 4台比較 中編
公開 : 2022.12.11 07:06
アウトバーンを延々と高速で疾走するため
メルセデス・ベンツE 55 AMGに、そんな感覚は存在しない。明快にラグジュアリー・サルーンであり、ドスンと重厚に閉まるドアの印象から違う。静かな車内に身を置くと安心感が漂う。
レザーシートは今回の4台では最も柔らかく高級。整然としたダッシュボードと相まって、気持ちが鎮まる。右足をカーペットへ届くほど深く倒しても、大排気量のV8エンジンからは調律されたサウンドがにじむように広がる程度だ。
それでも、メルセデス・ベンツは威風堂々と一気に加速する。機敏に仕事をこなす5速ATと厚みのあるエンジン音は、当時のストレスフルな上級役員を癒やしてくれたに違いない。
バーズアイ・メープル材が用いられた、ダークカラーの落ち着いたトリムが施され、ステアリングホイールは上等なレザー巻き。シフトノブには誇らしくAMGのロゴが輝き、メーターパネルも通常のEクラスとは異なる。特別なサルーンだと静かに主張する。
走行時の安定性は高く、ギア比は長い。アウトバーンを延々と高速で疾走するために誕生したという事実を物語る。乗り心地はシルクのように滑らかで、運転は驚くほど簡単。コーナーでは4台のなかで最もボディロールが大きいものの、扱い難さはない。
ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは多くない。少し気張ると、積極的にトラクション・コントロールが介入しドライバーをなだめる。
公道を飛ばせば、他の3台と同等のペースで目的地へ急げるはず。眼光も鋭いが、みだらなテールスライドは自制されている。
この続きは後編にて。