アウトバーンを延々と高速で疾走するため

メルセデス・ベンツE 55 AMGに、そんな感覚は存在しない。明快にラグジュアリー・サルーンであり、ドスンと重厚に閉まるドアの印象から違う。静かな車内に身を置くと安心感が漂う。

レザーシートは今回の4台では最も柔らかく高級。整然としたダッシュボードと相まって、気持ちが鎮まる。右足をカーペットへ届くほど深く倒しても、大排気量のV8エンジンからは調律されたサウンドがにじむように広がる程度だ。

BMW M5(E39/1998〜2003年/英国仕様)
BMW M5(E39/1998〜2003年/英国仕様)

それでも、メルセデス・ベンツは威風堂々と一気に加速する。機敏に仕事をこなす5速ATと厚みのあるエンジン音は、当時のストレスフルな上級役員を癒やしてくれたに違いない。

バーズアイ・メープル材が用いられた、ダークカラーの落ち着いたトリムが施され、ステアリングホイールは上等なレザー巻き。シフトノブには誇らしくAMGのロゴが輝き、メーターパネルも通常のEクラスとは異なる。特別なサルーンだと静かに主張する。

走行時の安定性は高く、ギア比は長い。アウトバーンを延々と高速で疾走するために誕生したという事実を物語る。乗り心地はシルクのように滑らかで、運転は驚くほど簡単。コーナーでは4台のなかで最もボディロールが大きいものの、扱い難さはない。

ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは多くない。少し気張ると、積極的にトラクション・コントロールが介入しドライバーをなだめる。

公道を飛ばせば、他の3台と同等のペースで目的地へ急げるはず。眼光も鋭いが、みだらなテールスライドは自制されている。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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